特集 超高齢化時代の呼吸器診療
序文
THE LUNG perspectives Vol.24 No.3, 14, 2016
老化を治療手段のない慢性消耗性疾患と捉える考え方がある。老化に伴って増加する悪性腫瘍,脳血管障害,肺炎などはその合併症だ。中国の皇帝が不老不死の薬を求めて世界に探索隊を送った話,竹取物語に登場する不死の薬など,老化と死に関する話は古くからある。若返りが可能かどうかは別としても,老化進行を決定する時間軸計測の物差しは,細胞の中に埋め込まれているはずである。それは何なのか。それを止めることができるのか。老化のメカニズムは人類古くからの大きな謎である。その生化学的基盤に関する生化学的研究も長い間行われてきたが,ようやくその一端が明らかになり始めている。一方,生活環境の改善や感染症対策などにより,各年齢の死亡率は減少し,平均寿命は延び続けている。今となっては信じられないことだが,昭和初期の平均寿命は男性42歳,女性43歳だった。しかしこの頃に生まれた人達は,2年生きるたびに平均余命が1年伸びる,という僥倖に恵まれた。現在80歳代の人達は,このような平均寿命高度成長時代を生きた人達なのである。
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