「Summary」2015年は,わが国において在宅酸素療法が健康保険適用となり30年を迎える節目の年であった。この30年間の間に在宅酸素療法を取り巻く医療の現場は激変した。本治療の主な対象患者は,肺結核後遺症から慢性閉塞性肺疾患(COPD),間質性肺炎,肺高血圧症などさまざまな疾患に移行した。その目標は,生存率の改善のみならず,日常生活動作(ADL)の拡大,肺性心の予防,生活の質(QOL)の向上などがあげられる。同時に,本治療法の効果判定も多角的な視点をもたなければならない。わが国は,他国に類をみない超高齢社会を迎えている。高齢者に対する適応,評価はどのようにあるべきか? 災害時などの安全対策,個人情報管理などを徹底し,一人ひとりのニーズに合わせたオーダーメイド治療が望まれる。近年,携帯型酸素濃縮器が発売された。慶應義塾大学病院では,2015年の新規在宅酸素療法導入数の1割以上を占め,特に間質性肺炎の患者への導入が多い。患者の身体活動性の向上を期待し,今後の展望をふまえて報告する。
「Key words」慢性閉塞性肺疾患(COPD),高齢化,QOL,在宅医療