「Summary」ARDSの病態では,損傷した肺胞上皮細胞の修復再生が創傷治癒や線維化抑制の観点から極めて重要なステップであるため,治療のターゲットとなり研究されてきた。その過程で骨髄や脂肪組織由来の間葉系幹細胞の投与が,局所における細胞間接着あるいはメディエイター放出によってシグナル伝達を行い,炎症抑制,免疫制御,組織修復促進,病原菌排除などの作用を示し,死亡率の低下に有効であることが多くの動物モデルで示されてきた。間葉系幹細胞は,分離も比較的容易で同種への投与においても免疫原生が少ないという利点がある。他疾患でヒトへの投与経験も蓄積され,重篤な副作用が示されていないため,今後,ARDSに対する前向き臨床試験で有用性が確認され,新規治療法として普及する可能性が期待される。
「Key words」間葉系幹細胞,ARDs,肺胞上皮細胞,組織修復,細菌排除