「Summary」肺動脈性肺高血圧症(PAH),慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の非手術症例・術後肺高血圧残存症例における薬物治療の中心はエンドセリン経路・プロスタサイクリン(PGI2)経路・一酸化窒素(NO)経路をターゲットとした肺血管拡張薬である。NO経路に作用するも,従来のホスホジエステラーゼ-5阻害薬とは異なる作用機序をもつリオシグアトは,CTEPHに対して初めて承認され,その他PAHに対してはエンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタン,経口PGI2受容体アゴニストのセレキシパグ,各々吸入・皮下投与が可能なPGI2アナログであるイロプロスト・トレプロスチニルといった新たな肺血管拡張薬が承認・申請されている。さらに,多剤を同時期に開始するupfront combination therapyやCTEPHに対するバルーン肺動脈拡張術の普及に伴い,肺高血圧症治療の選択肢は増加傾向にある。新規治療には大規模臨床試験において,運動耐容能・肺血行動態に加え臨床経過の有意な改善を示すものもあり,集学的治療による予後の改善が期待される。
「Key words」肺動脈性肺高血圧症(PAH),慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH),新規肺血管拡張薬,バルーン肺動脈拡張術