肺の究極の機能はガス交換であり,その良し悪しが身体組織・臓器(以下,組織と略す)の機能に影響する―言うまでもない常識だが。肺のガス交換機能は動脈血ガス値に表れ,組織のガス交換は混合静脈血に表れる。肺と組織の下流の血液ガスを測ると,それぞれの機能がわかる。そこで,組織低酸素があるか,否かを判断するには混合静脈血を分析しなければならない―言うまでもないことだが,動脈血ではない。では,なぜ混合静脈血ではなく動脈血ガス,特に動脈血酸素分圧(PaO2)が呼吸不全や酸素吸入の基準に使われているのか? 答えは明快。動脈血のほうがずっと採血しやすいからである。したがってPaO2を診断基準に使う根拠には,混合静脈血酸素分圧(PvO2)の実測,解析から導かれた,確たる根拠が必要である。今回は,私が最も力を入れていた研究領域の一つ,組織低酸素を巡るこぼれ話であるので,少々長くなるのをお許し願いたい。やっと疾患の話にたどり着いたことを口実にして。
いま振り返る研究の日々
第5回 呼吸不全の診断基準,酸素療法の適応基準に根拠はあるか?
掲載誌
THE LUNG perspectives
Vol.23 No.3 88-90,
2015
著者名
川上義和
記事体裁
抄録
疾患領域
呼吸器
診療科目
一般内科
/
呼吸器内科
/
老年科
媒体
THE LUNG perspectives
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。