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いま振り返る研究の日々

第5回 呼吸不全の診断基準,酸素療法の適応基準に根拠はあるか?

川上義和

THE LUNG perspectives Vol.23 No.3, 88-90, 2015

肺の究極の機能はガス交換であり,その良し悪しが身体組織・臓器(以下,組織と略す)の機能に影響する―言うまでもない常識だが。肺のガス交換機能は動脈血ガス値に表れ,組織のガス交換は混合静脈血に表れる。肺と組織の下流の血液ガスを測ると,それぞれの機能がわかる。そこで,組織低酸素があるか,否かを判断するには混合静脈血を分析しなければならない―言うまでもないことだが,動脈血ではない。では,なぜ混合静脈血ではなく動脈血ガス,特に動脈血酸素分圧(PaO2)が呼吸不全や酸素吸入の基準に使われているのか? 答えは明快。動脈血のほうがずっと採血しやすいからである。したがってPaO2を診断基準に使う根拠には,混合静脈血酸素分圧(PvO2)の実測,解析から導かれた,確たる根拠が必要である。今回は,私が最も力を入れていた研究領域の一つ,組織低酸素を巡るこぼれ話であるので,少々長くなるのをお許し願いたい。やっと疾患の話にたどり着いたことを口実にして。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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