「歴史的背景」癌(悪性新生物)は日本人の死因の第1位である。癌は転移を起こすときわめて予後が悪くなることから「転移を制する者は癌を制する」といわれている。癌が原発巣から浸潤・転移する際には,基底膜や間質コラーゲンといった細胞外基質(extracellular matrix;ECM)を分解する必要がある1)。ECMの分解はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)と呼ばれるプロテアーゼにより担われているが,細胞膜上に発現するMMPであるMT1-MMPが癌の浸潤・転移に特に重要な役割を果たしていることが多くの研究から明らかとなっている2)。MT1-MMPはECM分解だけでなく,他の膜タンパクやサイトカイン,ケモカインといった分泌タンパクの切断を介してその機能を調節することでも癌の悪性化を促進している。
「Key words」MT1-MMP,癌,HIF-1,マクロファージ,Mint3