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特集 慢性呼吸器疾患:ベッドサイドの運動負荷試験―実践と理論

序文

萩原弘一

THE LUNG perspectives Vol.21 No.2, 12-12, 2013

平成24年度の診療報酬改定で, 時間内歩行試験が保険適応となった. これを契機に, 6分間平地歩行テストを診療に取り入れようと計画している施設, すでに取り入れた施設も多いことだろう. 時間内歩行試験は, 運動耐容能試験, 運動負荷試験などと位置づけられる. ここで, 運動耐容能は何で規定されるのか, 運動耐容能試験の理論的根拠は何か, 通常の呼吸機能検査ではかることのできない何を見ているのか, 少し考えただけでも, さまざまな疑問が浮かんでくる. 時間内歩行試験は, どのような疾患の患者に適応となるのだろうか. 慢性閉塞性肺疾患(COPD), びまん性肺疾患, 陳旧性肺結核などでは, 良い適応となることはすでに疑いようの無い事実である. しかし, 合併症のある患者ではどうなのだろうか. 呼吸器関連の医療者がしばしば接する循環器疾患患者, 神経筋疾患患者ではどうなのだろうか. 本企画は, 編者自体が感じたこのような疑問を, じっくり勉強させていただきたいという, ややわがままな理由により計画したものである. 本企画の前半部分は, そのため, 6分間平地歩行テストを中心として, その理論的根拠, 問題点, さらに時間内歩行試験が呼吸器診療上重要な情報をもたらすデータであることが確立してきた歴史的な経過から始まる. ついで, 運動耐容能を決定する生理因子へと考察を進める. 運動耐容能は, 実は大きく二つの異なる分野の学問を一つにまとめたものである. 一つはスポーツ選手の最大酸素摂取量と運動耐容能との関連などで語られる, 運動エリートのための運動耐容能. いかに強い選手を作るか, という学問である. 我々が日常触れる運動耐容能は, 疾患を持つ患者に, いかに健康的な日常生活を送っていただくかという, ハンディキャップのある人における運動耐容能である. 運動耐容能のこの広いスペクトラムは, どこまで共通の言葉で語ることができるのか. 片方で得られた情報, 評価項目などの学問は, もう一方でも役に立つのだろうか. そして, 呼吸器以外の臓器に疾患を持つ患者における運動耐容能, 運動負荷へと進む. ここで特記しなければならないのは, 神経筋疾患患者における運動負荷テストに関して, 筆者の谷田部先生, 川井先生から, その危険性を記載いただいたことである. 運動負荷は常に有用であるという, ややもすれば一般的常識のように語られる事項の誤りを, きっちりとご指摘いただいた. 本企画の一つの目的は, 運動負荷が有用である限界点がどこにあるかを明らかにすることでもあった. 両先生には感謝するとともに, この記事の重要性を強調しておきたい. 企画の最後は, リハビリテーションとの関連を中心に, 6分間平地歩行テストの結果を患者に還元していくための方策, そして実際に施行する場合の注意点である. リハビリテーションに関わる医療者に, 有用な情報を提供している. 6分間平地歩行テスト, 運動負荷の特集は, 呼吸器関連雑誌では非常に珍しいものと考える. 本号は, 通常はその情報に触れることの少なかった呼吸器の医療者に, 重要な情報を提供するものとなった. いつものTHE LUNG perspectives誌とはやや趣が異なる本号を, 有効に活用していただきたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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