「Summary」日本の高齢化は先進国の中でも最速であり, 高齢化率は現在の23.1%から2055年には40%を超える見通しといわれている. 高齢者の増加は社会構造に大きく影響し, 都市部では子供のいない夫婦・単身者が増え, さらに認知症・要介護者の増加が予測され, 一部では地域コミュニティーの存続すら危ぶまれている. 平均寿命が延びて高齢者の絶対数が増えることは高齢者特有の疾患増加に関連し, 特に肺炎やCOPDなどの呼吸器疾患は死因として重要となる. 一方, 特に日本経済の不振が大きな陰を落としている現在, 高齢化による医療需要の増大は止められず, これに見合う歳入増加の見通しも立たない. 医療費抑制論だけが独り歩きしている感もあるが, 医療支出の増減について国民が納得できる説得力ある根拠が不十分な点も問題である. 本当に必要な医療支出を滞らせないためにも, 説明責任のある医療政策者は費用対効果などの論拠を提示すべきである.
「Key words」医療費, 費用対効用, 介護, 地域包括ケアシステム
「Key words」医療費, 費用対効用, 介護, 地域包括ケアシステム