「Summary」加齢に伴う呼吸器の病理組織学的変化として, 以下の点が挙げられる.
(1)脊椎の圧迫骨折, 変形性脊椎症による脊椎後彎, 肋軟骨骨化, 肋骨頭関節の石灰沈着により, 胸郭のコンプライアンスが低下する.
(2)骨格筋のサルコペニアの一環として呼吸筋, 特に横隔膜が萎縮し, 呼吸筋力が低下する.
(3)気道では線毛機能の低下, 免疫老化から慢性炎症が持続する. 呼吸領域では呼吸細気管支, 肺胞道, 肺胞の一様な拡張が目立つ. 肺胞壁の目立った破壊, 炎症, 線維化は伴わない.
「I 呼吸器系の加齢性変化」加齢性変化は全身に現れるが, なかでも神経系, 循環器系の加齢性変化は著明で, 呼吸器系の加齢性変化は比較的軽い. 加齢現象は生理的老化, 病的老化, 老年病に分かれるが, 実際上その区別は簡単ではない. たとえばアルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)に特徴的な老人斑をとっても, 90歳以上で老人斑のない症例は稀であり, 加齢現象は生理的範囲内での加齢性認知機能低下から若年性ADまで連続的スペクトラムを呈する.
「Key words」加齢, 高齢者, 老人肺, COPD, 肺気腫