Summary  Pulmonary hypertension due to chronic thromboembolic and/or embolic disease(慢性肺血栓塞栓/塞栓症)は肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)を呈する疾患の1つである。  肺血栓塞栓症は欧米では心筋梗塞,脳梗塞と並んで比較的一般的な疾患で,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)から始まる一連の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)として理解され,突然死を免れた急性例の0.1~0.5%が慢性例に移行し,その予後は不良で重症度は肺動脈圧と相関する。成因には不明な点も多く肺高血圧が進行するメカニズムは十分に解明されておらず,内皮細胞の障害に端を発した血管のremodelingといわれている。  近年の肺血管拡張療法を中心とした肺高血圧症に対する内科治療の進歩は著しいものがあるが,慢性血栓塞栓症が病因で肺動脈の比較的中枢から病変がある症例には,外科治療(肺動脈内膜摘除術;PEA)を積極的に考慮すべきであり,手術の可否を含めた術前診断が重要となる。