Summary
肺血栓塞栓症(PTE)は,主に急性呼吸不全を呈する重篤な疾患であり,病態としてはガス交換障害と肺循環障害を認める。急性PTEにおける低酸素血症の原因は換気血流比(VA/Q)不均等分布が主であるが,混合静脈血酸素飽和度(SVO2)低下もある程度関与しており,また一部の重症例では肺内シャント,心内シャントの関与も想定される。一方,PaCO2は,ほとんどで低下しており,これは分時換気量の増加による。また,急性PTEにおいては,生理的死腔量(VD)も変化しており,近年死腔換気率(VD/VT)を診断に用いる試みもなされている。さらに急性PTEではおおむね50%以上の血管閉塞で総肺血管抵抗の増加を認め,平均肺動脈圧は最高40mmHgまで増加する。
急性PTEの診断においては,近年Dダイマー定量と多列検出器型コンピュータ断層撮影装置(MDCT)の重要性が増している。治療は重症度に応じて行い,抗凝固療法のみでよい場合から,下大静脈フィルター挿入,血栓溶解療法,カテーテル治療,さらには経皮的心肺補助装置(PCPS)の装着が必要となる場合もある。
全文記事
呼吸不全の臨床―病態と治療―
肺血栓塞栓症にみられる呼吸不全
Respiratory failure in pulmonary thromboembolism
掲載誌
THE LUNG perspectives
Vol.19 No.1 38-45,
2011
著者名
藤島清太郎
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
循環器
/
呼吸器
診療科目
循環器内科
/
心臓血管外科
/
呼吸器内科
/
手術・救急
/
放射線科
媒体
THE LUNG perspectives
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。