Summary  肺血栓塞栓症(PTE)は,主に急性呼吸不全を呈する重篤な疾患であり,病態としてはガス交換障害と肺循環障害を認める。急性PTEにおける低酸素血症の原因は換気血流比(VA/Q)不均等分布が主であるが,混合静脈血酸素飽和度(SVO2)低下もある程度関与しており,また一部の重症例では肺内シャント,心内シャントの関与も想定される。一方,PaCO2は,ほとんどで低下しており,これは分時換気量の増加による。また,急性PTEにおいては,生理的死腔量(VD)も変化しており,近年死腔換気率(VD/VT)を診断に用いる試みもなされている。さらに急性PTEではおおむね50%以上の血管閉塞で総肺血管抵抗の増加を認め,平均肺動脈圧は最高40mmHgまで増加する。  急性PTEの診断においては,近年Dダイマー定量と多列検出器型コンピュータ断層撮影装置(MDCT)の重要性が増している。治療は重症度に応じて行い,抗凝固療法のみでよい場合から,下大静脈フィルター挿入,血栓溶解療法,カテーテル治療,さらには経皮的心肺補助装置(PCPS)の装着が必要となる場合もある。