特集 尿酸に影響する遺伝性代謝異常、最近の進展
3.各論[低尿酸血症] 1.腎性低尿酸血症
高尿酸血症と痛風 Vol.28 No.1, 59-64, 2020
これまでの研究から,低尿酸血症を示すさまざまな遺伝性疾患が報告されてきた。日本人においては,腎性低尿酸血症(renal hypouricemia;RHUC)がその代表例であり,日常の診療で最もよく遭遇する低尿酸血症の原疾患である。
日本人の0.3%程度,すなわち透析患者と同数程度がこの疾患をもつと推定されているものの,医療関係者においてさえもその認知度は低く,「尿酸値が低いぶんには問題はない」という誤解のために,RHUC患者がその診断をされないまま合併症を繰り返している症例がまだまだ全国的に存在するのが現実である。
一方で,一連の研究により,腎性低尿酸血症の原因や病態が徐々に明らかになってきており,原因遺伝子(後述)は日本人患者から日本人研究者が同定しているなど,本疾患の研究の発展において,日本は大きな役割を果たしてきた。このような研究成果を臨床の場で生かし,同時に疾患像のさらなる解明や治療・予防法の確立に繋げるために,「エビデンスに基づく医療」(Evidence-based medicine;EBM)を重視したガイドライン作成法Minds(Medical information network distribution service)に準拠した,腎性低尿酸血症診療ガイドライン第1版が2017年4月についに策定された1)。本稿では,この腎性低尿酸血症診療ガイドラインに基づき,腎性低尿酸血症を概説する。
なお,日本語版2)に加え,2019年1月には英語版3)が,そして10月には患者向けの解説4)が発表され,それぞれウェブ上で無料公開されており,これらも併せて臨床や研究にご活用いただければ幸いである。
「KEY WORDS」低尿酸血症,運動後急性腎障害,尿路結石,URAT1/SLC22A12,GLUT9/SLC2A9
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。