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患者教育実践講座

腎性低尿酸血症のアスリートに対する患者教育

中山昌喜中嶌真由子松尾洋孝

高尿酸血症と痛風 Vol.27 No.2, 73-76, 2019

腎性低尿酸血症(renal hypouricemia;RHUC)は,腎臓における尿酸の再吸収不全により,文字通り血清尿酸値(serum uric acid;SUA)が低値を示す疾患である。日本人で比較的頻度の高い疾患であり,これまでわが国が世界の研究をリードしてきた。RHUCそのものは無症状であるが,合併症として運動後急性腎障害(exercise-induced acute kidney injury;EIAKI)および尿路結石がある。
本疾患にはこれまでエビデンスやコンセンサスのある診断指針・ガイドラインは存在せず,専門家以外が患者教育を行うことは難しい状況にあった。特にアスリートにとってはEIAKIの発症予防は重要であるものの,疾患自体の存在が医療従事者にさえもあまり知られておらず,相当数のアスリートがEIAKIに悩まされてきたものと推測される。そのようななか,2017年4月,「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine;EBM)を重視したガイドライン作成法Minds(Medical information network distribution service)に準拠した,『腎性低尿酸血症診療ガイドライン』(英名:Clinical practice guideline for renal hypouricemia)第1版がついに策定された1)。このガイドラインは医療従事者・患者双方への啓発を含め,エビデンスやコンセンサスに基づいたRHUCについての一通りの記載があり,これにより専門家以外でも標準的な患者教育を行うことが可能となった。なお,本ガイドラインは日本語版2)・英訳版3)ともに一般公開されており,無料で利用可能であるため,ぜひ御一読いただきたい。
本稿では,この『腎性低尿酸血症診療ガイドライン』1)-3)に基づき,アスリートを含めたRHUC患者への教育について概説する。ただし,本稿は個々の患者への教育内容を強制するものではない。あくまでも症状の程度や患者の意思を評価・尊重し,医療従事者と患者の双方による治療方針の決定の資としていただければ幸いである。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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