日本の痛風患者は年々増加してきており,国民生活基礎調査によると痛風で通院している患者は2013年には100万人を超えたと推定されている。痛風患者は痛風性関節炎,痛風結節といった尿酸沈着症を合併しやすく,腎臓病,高血圧症,心血管疾患,メタボリック症候群など種々の疾患との関連も多くの観察研究に基づいて指摘されており,高尿酸血症の是正は重要である。日本,米国,欧州のガイドラインでは痛風性関節炎の予防の観点から尿酸降下療法における血清尿酸値の目標値を6mg/dLとして,それ以下に管理するように推奨している1)。実際は目標値の達成は生活習慣の改善だけでは困難なことが多く尿酸降下薬による治療が必要になる例が多い。しかし,他の生活習慣病と比べると通院を中断する例や服薬率が低い例が多く,痛風診療の大きな課題の1つとなっている。米国において主な生活習慣病の服薬アドヒアランスを約70万人について調べた結果をみると,1年間の総投薬量に対する実服薬量の割合,すなわち薬剤保持率(medication possession ratio;MPR)が80%以上の割合は,高血圧症,糖尿病がそれぞれ72.3%,65.4%である一方,痛風は36.8%であった2)。すなわち良好な服薬習慣をもつ患者は痛風では高血圧症,糖尿病に比べて半数にすぎないとみられる。日本において,処方されたが服用されなかったいわゆる「残薬」の推定額は年間約100億~約8,744億円と幅はあるがかなりの額に上るという調査もあり,服薬アドヒアランスの低下は治療効果の低下だけでなく医療保険財政にも大きな影響を及ぼしている3)。年齢と職業が服薬アドヒアランスに影響するという報告も多い。坪井らは,服薬アドヒアランスがよいという認識は,高齢者に比べて若年者が低く,また無職の人に比べて有職者が低かったと報告している4)。痛風患者には若年者,有職者が多いので,痛風患者の服薬アドヒアランスは低いという実態と一致する。尿酸降下薬の服薬アドヒアランスが低下すると,治療効果は低下して痛風発作の発生や合併症の増悪をきたして医療コストの増加にもつながるので,服薬アドヒアランスの改善は重要な課題である。谷口も痛風患者の治療アドヒアランス改善の重要性について述べている5)