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Cutting Edge

新規β₃受容体作動薬ビベグロンは高齢者過活動膀胱患者に有用か?

吉田正貴

排尿障害プラクティス Vol.30 No.2, 57-64, 2023

過活動膀胱(overactive bladder;OAB)とは,尿意切迫感を主要症状として頻尿や夜間頻尿を伴い,切迫性尿失禁は伴わないこともある症候群と定義されている1)2)。OABの有病率は加齢とともに増加する3)
OABは生命を脅かす疾患ではないが,QOLや健康寿命に影響し,高齢社会では重要な問題である。一般に,加齢とともに併存疾患数が増え,それぞれの疾患の治療のため多剤併用となる。そのため,OAB患者は併存するいくつかの生活習慣病(たとえば高血圧)などを治療している。
OABの病態生理と関係して3つのβ受容体のサブタイプ(β₁,β₂,β₃)が膀胱平滑筋や尿路上皮で同定されている4)5)。ヒト膀胱平滑筋ではβ₃受容体が有意でβ受容体全体の97%を占め6)7),蓄尿期には膀胱平滑筋の弛緩を担う主要な受容体であると報告されている8)。この3つのβ受容体のサブタイプは心血管系にも発現している。そのためβ₃受容体作動薬(以下,β₃作動薬)での血圧上昇や頻脈などの心血管系への影響が懸念され,β₃作動薬の心血管系の影響を確認することは重要である。
本稿では新規β₃作動薬であるビベグロンの高齢者への影響,特に心血管系に対する安全性を評価した下記の論文について解説する。本論文はビベグロンの第Ⅲ相試験の結果を,高齢者と非高齢者のサブグループに分けて検討したPost-hoc解析である。

Yoshida M,Takeda M,Gotoh M,et al.Cardiovascular safety of vibegron,a new β₃-adrenoceptor agonist,in older patients with overactive bladder: Post-hoc analysis of a randomized,placebo-controlled,double-blind comparative phase 3 study.Neurourol Urodyn.2021;40:1651-60.
(ビベグロン,新規β₃アドレナリン受容体作動薬の心血管系に対する安全性:無作為化プラセボ対照2重盲検比較試験のPost-hoc解析)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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