学会賞 受賞演題・論文解説 第26回 日本排尿機能学会
臨床部門 Metabolomic Analysis of Overactive Bladder in Male Patients:Identification of Potential Metabolite Biomarkers
排尿障害プラクティス Vol.28 No.1, 76-78, 2020
尿意切迫感を主症状とする過活動膀胱(over-active bladder;OAB)は,超高齢社会の現在では有病率も高く,非常に多くの患者に対して治療が行われています1)。しかし,OABの病態は不明な点もいまだに多く,治療に難渋することも少なくありません。患者の生活の質(quality of life;QOL)を著しく低下させるOABに対し,さらなる病態解明と新たな治療法が望まれます。
一方,近年では,代謝産物を網羅的に解析するメタボロミクスによって病態生理を明らかにし,治療のターゲットを探索する研究があらゆる分野で広がっています。メタボロミクスは,4,000種類近い代謝物質をサンプルから分離・抽出し,存在量を測定します。ある疾患において,特定の代謝物質が増減しているかを確認し,どのような代謝経路が関与しているかを明らかにし,疾患の病因や治療の標的になり得る物質や経路を同定する解析方法です2)。そこで今回,我々はメタボロミクスを用いて,OABの主症状である尿意切迫感と関連のある代謝物質を明らかにすることを目的とした研究を行いました。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。