学会賞 受賞演題・論文解説 第26回 日本排尿機能学会
基礎部門 尿路上皮培養細胞からのATP放出は時計遺伝子の制御下に経時的変化を呈する
排尿障害プラクティス Vol.28 No.1, 70-72, 2020
膀胱壁の伸展は,尿路上皮細胞に発現しているPiezo1やTRPV4といった伸展刺激受容体によって感知され,細胞内にCa²⁺などを流入させます。これがトリガーとなり,Connexin26(Cx26)やVNUTなどのチャネル,ATPトランスポーター蛋白を介してATPなどの神経伝達物質を放出することにより尿意を知覚することができます1)。過去の報告では,野生種マウスの膀胱上皮における伸展刺激受容体やCx26などのチャネル類の発現が時計遺伝子の制御下に概日リズムを呈するとされています2)。
時計遺伝子とは生体内の概日リズムを制御する転写因子群であり,10種類以上が知られています3)。面白いことに,時計遺伝子の1つである既旧リズム障害を呈するマウス(Clock変異マウス)では,Piezo1やTRPV4,Cx26,VNUTなどの遺伝子発現リズムが消失しており,睡眠期の頻尿症状を呈するといった報告があります4)。これまで私は,時計遺伝子が尿意知覚に活動期>睡眠期となる概日リズムを付帯させ,このリズムの消失が夜間頻尿を引き起こすのではないかと仮定して研究を行っていました5)。
今回は,マウスの膀胱から採取した尿路上皮培養細胞に伸展刺激を与え,放出されるATP(尿意知覚)が尿路上皮の遺伝子発現リズムに相関して概日リズムを呈するのか調べました。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。