下部尿路の血流が排尿機能へ及ぼす影響については,基礎実験や臨床研究においてさまざまな報告がなされている。さらに,PDE5阻害薬が排尿障害治療薬として認可され,治療的側面からの発展も期待される。本稿ではNO/cGMP系を中心とした血管平滑筋の弛緩メカニズムについての基礎的な解説と,生理的,病的状態における血流の下部尿路機能に及ぼす影響,PDE5阻害薬の血流改善作用につき現在得られている知見をもとに解説する。
「はじめに」近年,下部尿路の血流が排尿機能に及ぼす影響についてさまざまな知見が得られ,血流の増減が排尿機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆されている。局所の血流増加作用により,勃起障害(erectile dysfunction;ED)および肺高血圧症に保険適応が認められていたPDE5阻害薬が,新たに排尿障害治療薬としての可能性を広げたことは周知の事実である。その主たる作用機序であるNO/cGMP系を中心に下部尿路に対する血流の影響について述べる。
「Key Words」下部尿路血流,血管平滑筋,NO/cGMP,PDE5