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特集 下部尿路機能障害と膀胱血流

特集に寄せて

柿崎秀宏

排尿障害プラクティス Vol.21 No.4, 5, 2013

下部尿路機能障害の病態には, 神経原性, 筋原性, 尿路上皮性, 虚血性因子が相互に複雑に関与する. 動物モデルを用いた基礎研究では, これらの因子がどのように下部尿路機能障害に関与するかが解明されつつある. 下部尿路閉塞(BOO)モデルでは閉塞に伴い膀胱虚血が生じるため, 前立腺肥大症に伴う過活動膀胱や膀胱収縮力障害のモデルとして利用されてきた. また, 総腸骨動脈に内膜損傷を起こし, その後に高コレステロール餌を投与することで作成する膀胱虚血モデルは, 加齢や動脈硬化に伴う下部尿路機能障害のモデルとして利用され, これまでに多くの知見が集積されている. さらに, 高血圧自然発症ラット(SHR), 遺伝的高脂血症ウサギ(WHHL-MI)も膀胱虚血に伴う過活動膀胱のモデルとして研究され, これらのモデルにおいて膀胱虚血を改善する可能性のある薬物が注目されている. ヒトを対象とした研究では, 疫学研究において生活習慣病と過活動膀胱の相関が指摘されており, male LUTS患者において動脈硬化とLUTSが相関することも報告されている. さらに, 前立腺肥大症に伴う下部尿路閉塞患者を対象とした臨床研究では, 薬物治療あるいは手術療法により膀胱の血管抵抗が低下して膀胱の血流が改善すること, 膀胱血流の改善が不良な場合には, 治療後も過活動膀胱が残存することなど, 興味深い知見が報告されている. 今後, 臨床において膀胱虚血と下部尿路機能障害の解析を進めるためには, 膀胱虚血を反映する有意義なバイオマーカーの同定も重要な課題である. 過活動膀胱や膀胱収縮力障害の新しい治療法を確立するためには, 膀胱虚血に正面から取り組むことが不可欠であろう. 本特集では, 基礎研究の立場から齊藤源顕, 野宮正範, 吉田正貴, 本田正史の各先生にこれまでの基礎研究の知見をわかりやすく解説して頂いた. 臨床の立場からは, 和田直樹先生に5α還元酵素阻害薬およびTURPによる膀胱血流改善効果について, また斎藤恵介先生にHoLEPによるBOO解除前後の膀胱血流と膀胱機能について解説して頂いた. 横山光彦先生には, 膀胱血流とバイオマーカーについて解説して頂いた. 新保斉先生には, BOOの評価における前立腺のResistive indexの有用性につき解説して頂いた. 本特集が起爆剤となって, 下部尿路機能障害の病態解明と新しい治療法の開発に向けてのさまざまな研究が進むことを祈念して止まない.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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