前立腺癌
第35回 人工尿道括約筋
掲載誌
排尿障害プラクティス
Vol.21 No.2 67-72,
2013
著者名
中川晴夫
/
海法康裕
/
荒井陽一
記事体裁
抄録
疾患領域
泌尿器
/
癌
診療科目
泌尿器科
/
手術・救急
媒体
排尿障害プラクティス
「はじめに」尿失禁は性機能障害と並ぶ前立腺全摘術の二大術後合併症である. 特に重症例ではほとんど蓄尿できず, すべての排尿をおむつに頼らざるをえない場合もあり, 日常生活を送るうえで生活の質を大きく損なうことが知られている. 尿失禁は前立腺全摘術後の早期にはほとんどの症例でみられるが, 時間の経過とともに改善し, 積極的な治療を必要としない方がほとんどである. しかし, 術後, 長期間改善しない場合もあり, 手術症例の1~3%では重症尿失禁が持続するといわれている. これまで, 男性腹圧性尿失禁に対する治療としては骨盤底筋体操やβ刺激薬の内服, コラーゲン注入などが頻用されてきた. しかし, これらの治療法は全尿失禁に近いような重症例には効果が少ないだけではなく, 長期的効果についても満足ゆく成績は示されていない. 海外では重症例に対しては人工尿道括約筋埋込手術が標準治療とされている. しかし, わが国では人工尿道括約筋埋込手術は1993年に先進医療として指定されたが, 200万円程度の費用が必要であったこともあり, 年間7例程度しか行われてこなかった1).
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。