女性骨盤底障害の診療における身体的検査は, 病歴の聴取とともに診断・治療の方向性を決定する重要な指針を与えるものである. 身体的検査をおろそかにすると, 不必要な検査を重ねたり誤った治療を行ってしまう可能性さえある. 疾患の特性から患者は羞恥心を伴うことが多く, 身体的検査にあたっては自尊心を損なわないよう, 協力的態度で細心の注意を払って行う必要がある. 本稿では, 女性骨盤底障害の基本的身体的検査について記載する.
「はじめに」女性の骨盤底障害に伴う疾患は, 骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁などが主なものである. これらの疾患を抱える患者は, 羞恥心や不安感から長い間受診をためらい, やっとの思いで外来を訪れることが多い. 検査中に尿漏れや, 腟口からの臓器の脱出を認める場合, 検者にとっては単なる所見であっても, 患者は非常に屈辱的に感じていることがある. したがって, 患者の自尊心を損なわないよう, 身体的検査は細心の注意を払って進めるべきである.
「Key Words」女性骨盤底, 身体的検査, POP-Q