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排尿障害の私の治療2―OAB・間質性膀胱炎―

間質性膀胱炎を疑う患者への対応

鈴木康之古田昭

排尿障害プラクティス Vol.19 No.3, 45-49, 2011

 間質性膀胱炎は,ごく少量の尿で膀胱不快感・疼痛を来す症候群で病理が不明で客観的所見に欠け確実な治療法もない.しかし,進行・悪化すると生活の質を極端に悪化させ2次的に精神の安定まで脅かすため治療意義は高く,適切な診断に基づく医療の提供が求められている.実際の診療には排尿日誌や膀胱内視鏡などが有用なツールとなるが,行動療法,薬物療法のみならず心理的サポートも含め医学知識と知恵を総動員してその対処にあたり,経験とともに治療のコツをつかむことが望まれている.

Key Words
間質性膀胱炎,排尿日誌,膀胱痛

はじめに

 泌尿器科領域では排尿障害も悪性腫瘍と同じく重要分野となった.一般に,新人泌尿器科医が最初に病棟で指導される重要課題は腫瘍学で,その思考過程がまず会得される.やがて,その医師が外来で排尿障害に出会うと,腫瘍を基に学んだ内容との違いに戸惑うことが多い.悪性腫瘍は病理組織検査や画像診断で確実(客観的)に診断でき,生命に関わる危険も高い.それに対し排尿障害は,問診に依存したあいまい(主観的)判定で,QOLを低下させるだけの病態である.よって排尿障害はある意味,適当に流して(?)診療を進めることも可能であった.
 しかし,近年の急速な高齢化を背景に排尿障害対策が急務となり,信頼できる問診表や排尿日誌などで排尿障害を客観的にとらえる工夫が行われるようになった.さらに排尿障害を全身疾患の一部ととらえた下部尿路症状(lower urinary tract symptoms;LUTS)という概念1)も生みだし,夜間頻尿が生命予後にも影響する事実2)も明らかとなって排尿障害の診療のレベルが上昇することとなった.その代表格が間質性膀胱炎(interstitial cystitis;IC)3-6)である.これはきわめて重度の生活の質(quality of life;QOL)低下を招き,進行・悪化で2次的に精神に変調を来すリスクも高く,IC患者からはその適切な診断治療が強く望まれている.
 そのような背景もあって近年,ICは過活動膀胱(overactive bladder;OAB)とならんで広く認知されるようになった.しかし,著しい混乱があり,病名すらIC以外にもpainful bladder syndrome(PBS),bladder pain syndrome(BPS),chronic pelvic pain syndrome(CPPS),hypersensitive bladder(HBS)があり,組み合わせでCPPS/IC,PBS/ICなどと表記されることすらある.さらに診断に有用なマーカーもなく有効な治療法もない.これでは専門医でも敬遠したくなるのは当然である.
 しかし,ICはまちがいなく疾患として存在し患者は適切な医療を切実に求めている事実があり,臨床医は「まったなし」の対処を迫られる.そこでここでは,ICにまつわる診断,治療を具体的に示し,排尿日誌や外来膀胱鏡の有用性を含め具体的対処を述べたい.

症例1:68歳女性

合併症:アレルギー性鼻炎,突発性難聴,高血圧,脂質異常症.
主訴:頻尿,膀胱痛.
起始と経過:10年前から頻尿気味であった.何度か近医を受診し,膀胱炎の診断で投薬をうけ直後は軽快していたが,その後頻尿が悪化傾向を示した.さらに下腹部不快感も出現したため他院泌尿器科を受診.精査で尿道狭窄が判明し尿道拡張施行され,頻尿に対し抗コリン薬(ソリフェナシン5mg/日)を投与され軽快していた.その後数年で下腹部痛も出現したため,別の泌尿器科の個人医院を受診した.検尿には異常なかったが臨床症状よりICを疑われ,外来にて膀胱内視鏡を施行され,点状出血(glomerulations)が確認された.その後数カ月は症状経過していたが悪化したため,2008年3月当科紹介受診となった.
 当科初診時の検尿・尿沈渣にて異常なく残尿は0ml.外来での超音波検査で尿路に異常を認めなかった.間質性膀胱炎症状スコア(interstitial cystitis symptom index;ICSI):16点,間質性膀胱炎問題スコア(interstitial cystitis problem index;ICPI):13点であった.持参の排尿日誌では1日尿量は400~600ml前後で1回排尿量は50ml前後であった.このため,入院による腰椎麻酔下の水圧拡張のオプションを提示した.しかし,内服による加療希望が強くアレルギー性鼻炎も合併しているので,スプラタスト300mg/3×14日を処方した.
 2週間後の再診時ではICSI:18点,ICPI:13点と薬物療法の効果なく,患者希望により外来での膀胱鏡検査(2%リドカインゼリー10ml,ジクロフェナクナトリウム坐薬50mg使用)を施行した.膀胱鏡用の生理食塩水注入(水圧約75cmH2O)とともに疼痛が起きたが250ml~300mlまで注入可能で,排水で点状出血も確認できた.外来での水圧拡張(膀胱鏡検査)の2週間後にはICSI:10点,ICPI:8点まで改善し,アミトリプチリン30mg/日を追加処方のうえ,食事内容と膀胱痛の関連を日記方式で調査施行し,オレンジジュースなどの悪化要因を避けることを指導した.その後,症状の悪化時に外来での膀胱鏡を行い,アミトリプチリンなどの処方で約3年間外来で経過観察している.

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