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排尿障害の私の治療2―OAB・間質性膀胱炎―

薬剤抵抗性過活動膀胱に対する仙骨表面治療的電気刺激治療

中川晴夫

排尿障害プラクティス Vol.19 No.3, 14-18, 2011

 頻尿・尿失禁を主訴とする過活動膀胱に対して,薬物療法が第1選択として治療されている.しかし,薬剤抵抗性の症例や副作用のために薬物療法が困難な症例に対しては治療に苦慮することが多い.仙骨表面治療的電気刺激療法は過活動膀胱診療ガイドラインでも推奨されているneuromodulationの一種であり,薬物抵抗性の症例に対して有効性を示し,重篤な副作用を認めない.現在は保険診療外の治療であるが,今後治験も予定されており,期待される治療法のひとつである.

Key Words
neuromodulation, sacral surface, electrical stimulation, OAB, incontinence

はじめに

 過活動膀胱は尿意切迫感を必須の症状とし,通常頻尿や夜間頻尿を伴い,切迫性尿失禁を伴う場合と伴わない場合があると定義されている1, 2).2003年の疫学調査ではわが国には40歳以上の人口の12.4%(810万人)の患者が存在し,その頻度は加齢に伴い増加する3).そのため,高齢化が著しいわが国においてはその重要性はますます高まりつつある.
 2005年に過活動膀胱診療ガイドライン4, 5)が発刊され,過活動膀胱治療の標準化がなされた.このガイドラインでは過活動膀胱治療の3つの柱として,行動療法,薬物療法,neuromodulation(電気・磁器刺激療法)が挙げられている.薬物療法は過活動膀胱治療の根幹をなすものとして捉えられているが,その有効率は60~80%程度といわれており,薬剤抵抗性の症例が存在している.また,薬物療法の主体である抗コリン薬にはさまざまな副作用も存在することから有効性を自覚しても副作用のために治療を継続できない症例も存在する.
 これに対して,薬剤を使用しない治療法として行動療法や電気刺激療法が試みられ一定の効果を示している.これらの治療法は,わが国の保険制度においては保険点数が未収載のもの,収載されていても実際のコストを反映していないものなど,経済的裏付けが十分なされているとはいえない.これらの事情も一因となり,わが国においては薬物治療に重点が置かれている.しかし副作用が少なく,薬剤抵抗性の症状にも効果を認めるこれらの治療法は,薬剤を使用できない症例や薬剤の効果が十分ではない症例にとっては非常に有用であり,今後の発展と普及が期待されている6).電気刺激療法による排尿障害治療の原理は不明な点が多い.以前から排尿筋過活動を抑制する効果が知られていたが,最近の知見として,電気刺激を行うことにより,脊髄細胞内のCファイバーの活動性を抑制するという動物実験の報告7, 8)がみられておりafferentの中枢における抑制も作用機序のひとつと考えられている.米国においては埋込み型の電気刺激治療や下肢(脛骨神経刺激)の電気刺激治療がFDAの認可を受けている.わが国においては干渉低周波刺激が保険適応を取得している.しかし,干渉低周波治療では医療施設で治療を行わなくてはならないこと,治療回数が保険診療上制限されていること,診療報酬が低いことから十分普及しているとはいいがたい.これに対して今回はわれわれの開発した体表刺激法のひとつで,非侵襲的治療法である仙骨部表面電気刺激法(sacral surface therapeutic electrical stimulation;SS-TES)による治療法と治療効果を紹介する.

Ⅰ 治療装置

 SS-TESに用いる刺激方法と刺激装置はわれわれの研究グループ9)が中心となって開発し医療用具としての厚生労働省の認可を取得(医療用具承認番号:21600BZZ00604000)した.しかし,排尿障害治療としての適応は取得しておらず,適応外使用の状態である.治療装置(のどか®)は現在リンテック株式会社から発売されている.この治療装置(図1)は家庭で使用可能にするために安全性を重視しつつ,持ち運び可能なようにコンパクトに設計されている.

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