<< 一覧に戻る

施設紹介(排尿障害プラクティス)

原三信病院泌尿器科

武井実根雄

排尿障害プラクティス Vol.19 No.2, 80-88, 2011

 福岡市の中心部にある原三信病院は江戸時代に黒田藩の藩医であった初代原三信を起源とし,明治時代以降は泌尿器科を中心として発展してきた長い歴史があります.現在は全359床,18の診療科と12の専門外来を有する福岡地域の重要な拠点病院として,急性期医療から地域連携までも担っています.
 同院発展の礎となった泌尿器科は,その後現在に至るまで,高い医療技術や先進的な取り組みを展開し,わが国の泌尿器科領域に大きな足跡を残しています.今回は,同院で長年にわたり排尿障害や性機能障害の診療に取り組まれている,泌尿器科部長の武井実根雄先生にお話を伺いました.(取材:「排尿障害プラクティス」編集部)

Q 排尿障害領域での診療方針について,お聞かせください.

 排尿障害はQOL疾患であるため,患者さんの要望に基づいた治療目標や治療法が求められると考えております.そこで当院では,患者さんの病態を正確に診断したうえで日常生活や費用面なども考慮に入れ,適切な治療選択肢をできるだけ多く提示して相談のうえ治療内容を決めていただくようにしています.また患者さんから治療法を一任された場合には,治療効果を含めた多角的な検討を行って,その患者さんにとってモアベターとみられる治療法から順に実施しています.
 病態の解明と治療効果の予測には,各種の検査が欠かせません.そこで,当院では排尿障害の診断のためのあらゆる検査を,すべて実施できるようにしています.なかでも,尿流動態検査は診断に重要なヒントを与えてくれます.尿流動態検査は煩雑なため,どこでも行えるという検査ではありませんが,当院では現在7名の排尿機能検査士が在籍しており,カテーテル挿入においては看護師と連携しながら,1日に6例強,年間では1,200例以上の尿流動態検査を行っています.殊に女性泌尿器科外来が開設された2008年以降は,検査数が急上昇しています(図1).

 たとえば前立腺肥大症をとっても薬物療法や手術など複数の治療法がありますが,尿流動態検査の結果から,各々の治療法による効果を推測することが可能です.またLUTSの場合も蓄尿障害と排尿障害のいずれか,あるいは両者の組み合わせで各種の症状を来すわけですが,尿流動態検査によって症状の原因となっている障害をつきとめることができます.さらに,近隣の開業医の先生方から紹介を受けることの多い,間質性膀胱炎や過活動膀胱など治療が困難であった事例でも尿流動態検査は有用です.検査の結果から,一般的な方法で治療が困難であった理由を明らかにできる場合も少なくありません.
 治療効果を予測して患者さんにきちんと説明することにより,治療の進め方・患者さんと医療者との関係にも大きなメリットが生じます.最初に試みた治療法で十分な効果が得られなかった場合にも,患者さんがあらかじめ治療内容と効果を理解されていれば変更に対して極端な不安感や抵抗感を持たず,追加治療へスムーズに移ることができます.また医師にとっても,治療の見通しをあらかじめ示すことで,患者さんとの信頼関係が崩れにくいというメリットがあるのです.

Q 疾患に対する治療内容のなかから,特徴的なものをご紹介ください.

 当院では,治療においても現時点で実施できるほぼすべての技術と手法を導入しています.山口秋人副院長の慧眼により前立腺肥大症の治療には,KTPレーザーによる前立腺蒸散術を導入しております.経尿道的前立腺切除術(TUR-P)にくらべ格段に低侵襲で,全身リスクがあるような患者さんでも実施が可能です.国内では保険適応がなかったため,実施しているのは現在4施設のみですが,そのうちの1施設が当院です(2011年7月より保険適応が認められる見込みです).
 他にも男性の尿失禁に対しては,20年以上前から前立腺がんの前立腺摘出後の尿失禁に対する人工括約筋埋め込み手術に取り組んできました.ようやく近い将来に,保険適応が認められる見通しが立ったところです.
 女性に多い腹圧性尿失禁では,病態によって治療法が異なります(図2).

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る