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治療法紹介

(薬物療法 前立腺肥大症)アボルブ®(デュタステリド 再訪)

塚本泰司福多史昌舛森直哉

排尿障害プラクティス Vol.19 No.2, 71-76, 2011

はじめに
 MTOPS研究1),CombAT研究2)で代表されるように,臨床的な前立腺肥大症(BPH)に対する5α還元酵素阻害薬(5ARDI)の有用性も今や明らかであるといえる.欧米ではこのような大規模第Ⅲ相試験が行われて,5ARDIとα1受容体遮断薬との併用に臨床上大きな意義があることも示されてきた.一方,わが国でも欧米に遅れてデュタステリドが保険適応となった.その後約2年が経過し,この薬剤の使用に関するニュアンスもようやく判明してきたのではないかと思われる.この薬剤に関してはすでに本誌上で報告されている3).その後,わが国での臨床試験によりデュタステリドの有効性,さらには排尿症状はもちろん蓄尿症状に対する効果なども明らかになった4-6).そこで,ここでは日本人の前立腺容積の自然史なども踏まえ,デュタステリドの臨床効果を再確認するとともに,欧米での長期投与の結果も検討する.さらに,今後に残された臨床的な問題点にも触れてみたい.

日本人における前立腺容積の自然史と前立腺容積縮小の臨床的意義

 一般男性の前立腺の容積が加齢とともにどのような経過(容積の増大あるいは縮小)をたどるかという点について,長期の縦断研究を行った検討は欧米ではいくつか報告されている.代表的なものはOlmsted countyでの研究で,10年以上の経過における一般男性の前立腺容積の推移が検討されている7).そして,初回評価時の前立腺容積,PSA(totalおよびfree),移行域容積などが将来の前立腺容積を予測する因子であることが示された.
 わが国においても,著者ら8)が15年にわたる縦断研究の結果を報告した.この研究では,15年間の経過で56%の男性に5ml以上の前立腺容積の明らかな増大が認められる一方,残りの45%では5ml以下の増大にとどまるかあるいは縮小していたことが示された.全体としての前立腺容積の増大は6.6ml(中央値)であった.前立腺容積の将来の増大を予測する因子は,初回評価時の前立腺容積と経直腸的超音波断層法の内部構造パターンであった.このように,特定のパターンのグループでの前立腺容積の増大が著明であることが示されたが,そのパターンを決定する要因は依然として不明である.いずれにしろ,前立腺容積は半数以上の男性では,加齢とともに明らかに増大する.
 この一般男性集団の15年間の観察中に,BPH/下部尿路症状(LUTS)に対して何らかの治療を受けるリスクを検討してみると,初回評価時の国際前立腺症状スコア(IPSS)の程度とともに前立腺容積が有意なリスク因子であった9).また,この間に手術を受けるリスクに関しては,初回評価時の前立腺容積の相対リスクが最も高く,次いでIPSS,最大尿流率であった.初回評価時の前立腺容積の程度と将来の治療の必要性とが,密接に結びついている結果と考えられる.
 一方,これまでのMTOPS研究1),CombAT研究2)からも明らかなように,医療機関を受診したBPHの患者では,前立腺容積を縮小させる薬剤を投与しない場合,すなわち臨床試験におけるプラセボあるいはα1受容体遮断薬投与では,年単位の経過とともに前立腺容積は増大し,その程度は一般男性の場合より著しい.残念ながらわが国ではこのような前向きに長期経過観察を行った研究は少ない.α1受容体遮断薬(ナフトピジル)を用いた著者ら10)の4年間の検討では,初回評価時の前立腺容積が大きいほど(35ml以上)外科治療を含む他の治療に変更される確率が高く,前立腺容積の臨床的な意味が明らかであった.
 後ろ向き研究ではあるが,319例のBPH患者を2.8年間追跡した著者ら11)の多施設共同研究でも,この3年弱の間で前立腺容積(平均)は35.1mlから39.9mlに増大している.また,この経過観察中,BPHに対して手術を受けるリスクは初診時の容積が30mlを超える場合の方がそれ以下と比較すると3.4倍高いことが報告されている(図1).

さらに,著者ら12)の別の検討ではBPHの最近の手術例における前立腺容積が増大していたが,これは前立腺容積の大きな例ではα1受容体遮断薬の効果が不十分で,最終的にこのような症例が残ってしまうことを示唆している.
 このように,一般男性あるいはBPHの長期経過のいずれにおいても前立腺容積は,治療という観点から大きな意味をもっていることになる.したがって,前立腺容積を縮小することに治療上大きな意義があることになる.

日本人に対するデュタステリドの効果の再確認と海外での知見

1 血中dihydrotestosterone(DHT)の低下

 わが国で行われた臨床試験では,デュタステリド0.5mg/日の投与により投与開始1カ月目では血中dihydrotestosterone(DHT)は投与前値の100%以下(90%の低下)低下し,服用中はそのレベルが維持されることが示された4).この結果は,これまでの欧米における報告結果と同様である13).一方,血中DHTの低下に伴い組織内のDHT濃度も低下し,投与後1週間で投与前の17%(83%の低下)に,1~4カ月では7~10%(90~93%の低下)に低下したと報告されている13).

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