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内視鏡で見えてきた解剖

第2回 内視鏡で見た腎周囲の筋膜解剖

川端岳

排尿障害プラクティス Vol.19 No.2, 53-63, 2011

はじめに
 泌尿器科領域において腹腔鏡手術が一般化するようになったのは精索静脈瘤に対する高位結紮術や骨盤内リンパ節郭清術からであり,これらの術式では拡大視野のメリットを感じていたものの,手術解剖に関して大きなメリットを感じることは少なかった.その後,腎や副腎疾患に対する腹腔鏡手術が一般化し,今では特に大きな腫瘍や浸潤傾向のある腫瘍のみに開放手術が行われる状況となっているが,同時進行的に映像技術が進歩し腹腔鏡カメラ自体がハイビジョン化や3D化され,さらに画像を映し出すモニターも高画質,薄型で大型化した.現在の高画質画像は,過去に開放手術において拡大鏡を装着して得られた「今まで見えなかった膜が見える」という感動を凌駕するもので,骨盤内の解剖に関する新知見が次々に報告され1),また腎周囲の手術解剖においても従来の手術書にある記載以上の知識が一般化している2).
 外科とは違い泌尿器科では経腹膜到達法のみならず後腹膜到達法による腹腔鏡手術が多く行われており,たとえば腎摘除術でも到達法の違いによって構造物の見え方が微妙に違うことはよく経験されることと思われる.ここでは各到達法により腎周囲の構造がどのように見えるかを主に根治的腎摘除術の術中写真を用いて解説したい.

左側経腹膜到達法

 経腹膜的に腹腔鏡を挿入し腹腔内の頭側を観察すると,症例によりさまざまな程度の結腸横隔靱帯が結腸の脾弯曲部に見られる(図1-a).

腸管の損傷を避けるために壁側の付着部に沿って剥離を行う(図1-b).さて,腎にアプローチするためには,まず下行結腸周囲の腹膜構造の成り立ちを理解する必要がある.外科領域では,上行結腸と下行結腸では本来の間膜が背側の腹膜に癒合してToldtの筋膜となり(図2),この発生機序によって結腸は後腹膜に埋没し,さらにこの癒合筋膜はS状結腸間膜根部から脾弯曲部を越えて膵尾部の背側に拡がっている,と説明されている3).

実際の手術場面で,癒合筋膜が腹膜と同様に光沢があり一定の厚みのある膜として認識されることはないのであるが,説明されている分布の状態通りにほぼ無血的な剥離層が得られることは事実である.傍結腸溝(図2)は仰臥位では凹みとして見えるが側臥位では凹みは明らかではなく,いわゆるToldtのwhite lineとして認識されるが(図3-a),腹膜切開ラインをそこに設定すると腎の後面に到る剥離ラインとなりやすい.

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