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排尿障害の私の治療1―夜間頻尿・尿失禁―

産婦人科の骨盤底・排尿診療

中田真木

排尿障害プラクティス Vol.19 No.2, 21-26, 2011

 産婦人科の専門的な骨盤底・下部尿路外来には,骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁などの骨盤底弛緩,妊娠出産に伴う骨盤底障害,内性器の占拠性病変の症候としての下部尿路症状などが多く受診する.産婦人科の一次診療では,これ以外に膀胱炎や特発性の過活動膀胱などが取り扱われ,専門外来でも関連の紹介を受けている.
 産婦人科の外来は,内診台と超音波検査機器が充実し骨盤底弛緩の評価には条件がよい.女性の下部尿路症状の成り立ちを理解するうえで,骨盤底支持と内性器疾患の精確な評価は重要性が高く,産婦人科の診療環境はそれ自身が女性の骨盤底・排尿診療のひとつのプロトタイプを提供している.
 産婦人科一次診療では,骨盤底・排尿診療は更年期医療の一翼に位置づけられ,今でも心身医療の延長としての骨盤底診療が行われている.一方,骨盤底と下部尿路のトラブルはもともと身体の問題であり,最近の女性骨盤底・排尿診療の進歩は,ほとんどが身体医療の領域で起こったものである.この領域の医療は,起源において従来型の更年期医療とは非連続であり,区別する必要がある.

Key Words
骨盤臓器脱,腹圧性尿失禁,下部尿路症状,超音波検査

はじめに―産婦人科の骨盤底・排尿診療

 筆者は三井記念病院産婦人科外来で女性の骨盤底・排尿診療を行っている.産婦人科における骨盤底・排尿の専門外来も,泌尿器科における女性泌尿器外来と同様,ごく最近生まれた─作ったというよりは自然に立ち上がってきた─ものである.
 このセッティングでの診療は,骨盤臓器脱(以下,POP)と下部尿路症状とが,2つの潮流をなしている.ほか,余裕をみて妊娠出産後の骨盤底障害や,特発性の骨盤底の疼痛性障害なども受け入れている.ただし後者については,時間の不足や関係スタッフをそろえられないことなどにより,今のところ深く関わるまでには至っていない(表1).

 POPの診療は,産婦人科における骨盤底・排尿診療の中心的テーマである.受診者のほとんどは,当科初診の前に,産婦人科や泌尿器科にかかったり子宮がん検診を受けるなどしてPOPの診断がついている.その場合,当科の使命は良質な手術治療を安定的に提供することになる.ここ数年,当科ではメッシュ埋没を少しずつ減らす方向で手術を開発してきた.その関係で企業との関係は薄れ,POP向けのキャンペーンによって当科へ紹介される受診者は少なく,医師や健診施設からの紹介や口コミによる受診者が大多数を占めている.
 POPの中には,腟や子宮がはみ出すのを自覚しながら長く受診しなかった人や,はみ出す症候は明らかでないが排尿関係の不具合や腟あたりの重圧感などによりみずからPOPと判定して受診する人がある.ただし,その中には,本当はPOPではない症例が含まれている.また,POPとして紹介される症例の中にも,最初にみずからPOPと判定して他施設に受診,担当医もPOPと思い込んで長くペッサリー管理を行い,その後に当科へ紹介される『POPもどき』がときどきある.これには,腹圧性尿失禁(以下,SUI)や神経因性膀胱などが含まれる.
 下部尿路症状関係の診療は,今は女性泌尿器外来があちこちにできており,自分で直接泌尿器科へ相談に行く消費者が増えているように感じる.一方,排尿診療の裾野が広がり産婦人科一次診療でも過活動膀胱(以下,OAB)やSUIの受け入れが増えていることから,産婦人科における専門外来への紹介も決して減ってはいない.OAB,夜間頻尿,SUI,神経因性膀胱などがこの部類の診療に含まれる.SUIは外科治療が奏効することが多いため,広い診療圏を構える手術に特化した診療施設の有用性は大きい.一方,保存的に投薬や生活指導などでアプローチする場合,遠くの専門医はなかなか十分な対応ができない.
 子宮筋腫,子宮内膜症などの内性器疾患には下部尿路症状や骨盤底の違和感を伴うことが多い.現に子宮筋腫では,夜中トイレに起きる,尿意のあるとき切迫する,膀胱が充満すると排尿しづらい,など排尿面の不具合により手術を決断する女性は少なくない.また,最近は骨盤底障害への一般社会の認知が進み,筋腫で硬く増大した子宮により骨盤内の重圧感が出現しているのを「子宮や腟の下垂感」と表現する人がある.これら内性器疾患に伴う骨盤底・下部尿路症状について,排尿記録,パッドテスト,ウロダイナミクス,MRIなどで精査しマネジメントの方針を提示する.実際の治療は,提示した治療プランや居住地域などに応じて,地元もしくは当科で行う.

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