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排尿障害の私の治療1―夜間頻尿・尿失禁―

女性腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋体操,バイオフィードバック療法

平川倫恵鈴木重行加藤久美子

排尿障害プラクティス Vol.19 No.2, 14-20, 2011

 腹圧性尿失禁の理学療法には骨盤底筋群の筋力増強を図る骨盤底筋体操や,機器を用いることにより収縮を視覚的,聴覚的,触覚的に確認しながら体操を行うバイオフィードバック療法がある.本邦においてはいまだ骨盤底筋体操の指導を行う体制が整っていないことから,腹圧性尿失禁保有女性の多くは収縮方法が正しいか否かわからず,体操を継続できずにいる現状がある.体操を継続するためには,尿失禁症状や骨盤底機能をアセスメントし,定期的にフォローアップすること,収縮感覚が得られない場合にはバイオフィードバック機器を活用することが必要であり,今後,体制の整備が望まれる.

Key Words
腹圧性尿失禁,骨盤底筋体操,バイオフィードバック療法,アセスメント,フォローアップ

はじめに

 腹圧性尿失禁は,咳やくしゃみなどの腹圧の上昇時に限って尿失禁が生じる疾患であり,生活の質(quality of life;QOL)にも大きな影響を及ぼす.その病態として,妊娠や出産,加齢に伴う骨盤底筋群の筋力低下が挙げられる.本稿では,骨盤底筋体操やバイオフィードバック療法の具体的な指導方法やアセスメント方法について示した後に,実際の症例を成功例,難治例の順に提示する.

Ⅰ 具体的な指導方法

1 骨盤底筋体操

 骨盤底筋体操1)を行っていくうえで重要となるのが骨盤底筋群の正しい収縮方法の習得である.まず,患者に骨盤底筋群の位置や機能を正しく理解させる必要がある.患者の多くは骨盤底筋群の位置をイメージすることが難しく,下腹部に力を入れてしまう場合がある.したがって,筆者は患者が理解しやすいようにイラストや骨盤底の模型などを活用するのに加え,恥骨や尾骨を患者自身にも触ってもらい,患者自身の身体における骨盤底筋群の位置を具体的にイメージさせるように心掛けている.骨盤底筋群の位置を確認したうえで,骨盤底筋群が骨盤内臓器を支持していること,女性では妊娠や出産,加齢などの影響により骨盤底筋群の筋力低下や,過伸張による筋の形態学的変化が生じ,支持が弱くなることを理解させる.さらに,腹圧性尿失禁が生じるメカニズムや骨盤底筋体操の目的についても理解させる.次に,随意的な収縮の指導を行う.口頭で指導する際には,収縮方法をイメージしやすくするために「腟を身体の中に引っ張り込むように腟や尿道をぎゅっと締めつけて」「かたい便を肛門で切るように」「おならを我慢するときのように」など,具体的な表現を用いるようにしている.医師や助産師など腟内診により骨盤底筋群の収縮が確認できる場合はよいが,本邦において理学療法士は基本的に腟内診を行うことができない.そのような場合には,腟と肛門の間にある会陰体を体表面から触診することにより,患者が正しく骨盤底筋群を収縮できているか確認する.収縮方法が正しければ会陰体は頭前方に吸い上げられるように動くが,収縮方法が間違っており,いきみなどがみられると会陰体は尾方に押し下げられる方向に動くので,これを確認する.また,骨盤底筋群を収縮させる際に起こりやすい代償運動として,腹筋群,内転筋群,殿筋群の収縮が挙げられる.これらの筋が誤って過剰に収縮しないよう,体表面からの触診によって患者に注意を促す.必要に応じて患者自身にも腹部や殿部に手をあててもらい,力が入っていないことを確認させる.その他の注意すべきポイントとしては,収縮中に息を止めていきんでしまう者や,全身を緊張させてしまう者が多く見受けられるため,自然な呼吸を心掛けリラックスした状態を保つよう適宜注意するようにしている.
 次に,自宅での体操をどのようなプログラムで行うか指導する.収縮・弛緩の時間については,TypeⅠ線維,及びTypeⅡ線維の双方の強化が図れるよう,5秒間の持続収縮と,2秒以内の瞬発的な収縮とを組み合わせたプログラムとしている.収縮・弛緩の回数,実施頻度については,患者が継続可能な回数を提示し,1日のうちで数回に分けて毎日実施させる.体操を実施する際の肢位については,仰臥位,肘,膝をついた姿勢,座位,立位などさまざまな肢位で行うようにする.これらに加え,咳やくしゃみ,重い物を持ち上げるなど腹圧が加わり漏れを誘発させるような動作をする直前から動作中にかけて意識的に骨盤底筋群を収縮させる習慣をつけるよう指導する.このことにより,体操を始めて1週間の早期の段階で咳嗽時の尿失禁量が減少することが報告されている2).
 一方,体操を始めてから効果が出現するまでには通常3カ月は必要であると報告されている3)が,効果が出現する前に体操をやめてしまう患者も多く見受けられる.したがって,定期的にフォローアップして尿失禁症状,骨盤底の機能の評価を行い,患者のモチベーションを高める必要がある.筆者は介入開始から0,2,4,8,12週目にフォローアップして評価を行っている.また,トレーニング日記を配布して自宅での体操の実施状況や尿失禁の回数,誘発契機などを記録してもらうことで,患者自身が症状の変化を感じながら体操を継続することができるようにしている.

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