前立腺癌
第26回 ドセタキセル
排尿障害プラクティス Vol.18 No.4, 71-77, 2010
「はじめに」前立腺癌に対する全身療法として抗男性ホルモン療法はほぼ全例に優れた治療効果が認められるが, 近年まで去勢後再燃前立腺癌(CRPC)に対する救済全身療法として確立されたレジメンがなかった状況にあった. 一般的にCRPCに対する化学療法の臨床研究が進展しない理由として, 薬剤サイドからみると, breakthroughとなる劇的な効果を示す薬剤が少なかったことと, また普遍的な治療効果判定基準の適応がCRPCでは困難なことが挙げられる. また, 前立腺癌に化学療法が奏効しない理由としては, 前立腺癌細胞のProliferation rateが2.9%で非セミノーマ胚細胞腫瘍(NSGCT)の1/15, Cell death rateはNSGCTの2%に過ぎず, Doubling timeは総じてslow growingという生物学的特徴を有することが報告1)されている. また, 患者サイドでみると種々の併存病変を有する高齢者が多く潜在的予備能の低下に加えて, 進行前立腺癌特有の低栄養状態, 広範な骨転移による骨髄機能障害, 閉塞性尿路病変による腎機能障害などにより抗癌剤固有の重篤な副作用が発現しやすいことなどから, したがって, 医療者が確信をもって患者・家族からインフォームド・コンセントを得ることが困難であった側面も一因と考えられる.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。