現在,高齢化に伴い脳梗塞患者および心房細動を有する患者は徐々に増加しており,日本の心房細動患者は100万人程度と推定されている1)。患者5,070人を34年間にわたって追跡したフラミンガム研究では,心房細動を有する患者の脳卒中リスクは,心房細動を有しない患者に比べて約5倍高いことが示されている2)。心房細動患者における脳梗塞は心原性血栓塞栓による梗塞が主であり,その血栓の約90%以上が左心耳由来だとされている3)4)。心原性血栓塞栓による梗塞は中枢の動脈が閉塞をきたすため,より重篤化しやすい。そのため,「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」5)においてはCHADS2スコア≧1点にて抗凝固療法が推奨されているが,その一番の懸念事項として出血リスクが挙げられる。
左心耳閉鎖デバイスは,長時間の抗凝固療法に忍容性のない非弁膜症性心房細動患者に対する心原性脳塞栓予防の非薬物治療として開発された。近年,経皮的に左房に挿入したカテーテルを用いて左心耳入口部を閉鎖するシステムが開発され,複数のデバイスがすでに臨床で用いられている。
本稿では,現在わが国で使用されているWATCHMANTMデバイスのエビデンスについて紹介する。
「KEY WORDS」脳梗塞,心房細動,左心耳,抗凝固療法