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特集 ガイドラインに基づいた心不全診療のスタンダード

基礎 診療ガイドラインとEBM

香坂俊

CARDIAC PRACTICE Vol.30 No.2, 15-20, 2019

従来からの診療ガイドライン(clinical practice guideline)は「その疾患や診療体系の全体像を理解する手引き書」としての役割を期待されてきており,実際わが国でも初期の診療ガイドラインはnarrative review(教科書的な叙述的記載)の形式を踏襲していた。しかし,evidence-based medicine(EBM)の普及に伴い,診療の現場では再現性のある有効な提言が求められるようになってきている。そのため,わが国の診療ガイドラインでもエビデンスレベルに応じた推奨がなされるようになっており,本稿前半部では今回改訂されたわが国の「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」1)を用い,その具体例を提示する。
また現在,世界的に診療ガイドラインの作成は大きく系統レビュー[systematic review:個別研究の質評価に系統的な手法を用いる(系統レビュー)]を重視した方向へと舵を切りつつある2)*。すなわち,既知の事実や概念を教科書的に述べることよりも,アウトカムの改善が強く期待できる課題を選択して取り上げ,その国や医療制度の実情に即した提言を行うことに力点が置かれるようになっている。厚生労働省委託事業EBM医療情報事業(Minds)により『Minds診療ガイドライン作成の手引き2007』において提唱されている指針なども系統レビューを推奨している3)。こうした診療ガイドラインの将来的な展望に関しては本稿後半部に提示する。

*:こちらの提言によれば診療ガイドラインは「エビデンスのsystematic reviewと複数の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書」とされる
「KEY WORDS」診療ガイドライン,EBM,Minds,心不全

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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