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目でみるページ Cardiovascular Pathology

心筋生検における非特異的病理所見

加藤誠也

CARDIAC PRACTICE Vol.30 No.2, 7-12, 2019

心筋症(cardiomyopathy)の診断における心内膜心筋生検[心筋生検(endomyocardial biopsy)]の役割は特異的な二次性心筋症(特定心筋疾患)の拾い上げに集約される。心筋生検で指摘し得る二次性心筋症として頻度の高いものとしては,心臓サルコイドーシス,ファブリー病,心アミロイドーシスがあり,それぞれステロイド1)や酵素補充療法2),そして近年,トランスサイレチン型心アミロイドーシスにタファミジスメグルミン(tafamidis meglumine)の適応症追加承認もなされたが3),いずれも治療法の選択につながる重要な情報となる。しかしながら,心筋生検において特異的な二次性心筋症を指摘し得る確率は低い。わが国有数の循環器診療の拠点である国立循環器病研究センター病理部からの報告では,過去10数年間に施行された5,000件を越える心筋生検において,組織学的に心臓サルコイドーシスと診断された症例は4.6%,心アミロイドーシスとされた症例は1.8%と記載されている4)。おそらく一般的な施設での陽性率はより低いものと思われる。心筋症の分類は米国5),欧州6)そしてわが国7)においても趣を異にしており,国際的にも統一されていない。それでも最近,公開されたわが国のガイドラインでは,いわゆる「原発性」(以前からの「特発性」)心筋症を肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM),拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM),不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:ARVC),拘束型心筋症(ristrictive cardiomyopathy:RCM)の4つに分類し(実際にはこれに分類不能心筋症が加えられる),“これら4つの原発性心筋症の診断は可能なかぎり二次性心筋疾患/二次性心筋症(「特定心筋疾患」ないし2005年の診断の手引きにおける「特定心筋症」)を鑑別したうえで確定されるべき”であると明言されている7)。翻って,原発性心筋症の各病型に特異的な病理組織学的所見はない。頻度の低い二次性心筋症を除外した後に残される大部分は非特異的病理所見(non-specific pathology)である。今回は,肥大心および拡張心の機能形質を示す不全心の心筋生検所見を題材に,非特異的病理所見の解釈(interpretation)について述べてみたい。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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