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特集 腸内細菌と循環器疾患

臨床 動脈硬化性疾患と腸内細菌叢

吉田尚史山下智也平田健一

CARDIAC PRACTICE Vol.29 No.4, 29-32, 2019

ヒトは血管と共に老いるといわれており,動脈硬化性疾患はわが国において死因の第2位,約30%をも占める。死に至らずとも,心筋梗塞や脳梗塞は,一度発症すると心機能低下や脳梗塞後遺症により著しく生活の質や健康寿命を低下させる。高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙は動脈硬化性疾患発症の危険因子であり,それらの危険因子をもつメタボリックシンドローム該当者・予備軍は,約2,000万人ともいわれている。さらに,食の欧米化により発症年齢の若年化も懸念されており,新たな動脈硬化の予防法・治療法の研究開発はわれわれ循環器内科医の使命である。そういった社会背景の中,わが国でも,国を挙げて動脈硬化性疾患の克服と健康寿命社会の実現のために,2016年に「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」が発表された。また日本動脈硬化学会も,10年以内の冠動脈疾患発症確率とリスクの程度を算出できるアプリを無料で提供するなど,動脈硬化性疾患の一次予防に力を入れている。われわれは以前から腸管免疫に着目して動脈硬化性疾患を制御する研究を行っており,特に近年は腸管免疫と密接に関連する腸内細菌叢を,新たな予防・治療標的とした研究を行っている。2013年には,Clostridium difficile感染症に対して糞便移植を行い90%近い治癒率が得られたとする発表がされるなど1),世間の腸内細菌叢への関心はますます増加している。
本稿では,動脈硬化性疾患と腸内細菌叢について,世界の研究の動向だけでなく私たちの研究の一部を紹介しながら,腸内細菌叢に対する介入が増加する動脈硬化性疾患への切り札となるのか,考察していきたい。
「KEY WORDS」Coronary artery disease,Gut microbiome,Bacteroides

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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