【特集 腸内細菌と循環器疾患】
総論
掲載誌
CARDIAC PRACTICE
Vol.29 No.4 15,
2019
著者名
平田 健一
記事体裁
特集
/
抄録
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
媒体
CARDIAC PRACTICE
腸は人体最大の免疫器官として知られ,腸内細菌についての研究は,古くから行われていた。近年,次世代シーケンサーを含めた科学技術の向上により,今まで分離培養が困難であった難培養性の菌種を含めて網羅的に短時間・低コストで解析することが可能となり,腸内に約1,000種類,100兆個程度の腸内細菌が常在していることが明らかとなった。腸内細菌叢は生後より宿主と制御し合いながら,宿主の免疫系のみならず代謝系にも大きな影響を及ぼすことが解明され,ヒトの健康だけでなく,肥満や代謝疾患,精神疾患,がんなど様々な疾患の発症と密接にかかわることが注目を集めている。循環器疾患においても,動脈硬化を基盤とした虚血性心疾患や心不全の発症・病態における腸内細菌の関与が示唆されている。さらに,メタトランスクリプトミクスやメタボロミクスなどの解析技術の進歩によるビッグデータ医療の時代を迎え,腸内細菌のもつ機能をより詳細に解明する研究が飛躍的に進んでおり,今後は,腸内細菌が宿主の健康や疾患発症に及ぼす分子機序について,より詳細に解明されていくと期待される。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。