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特集 循環器疾患を見据えた糖尿病治療戦略

トピック 血糖値スパイク

金智隆北風政史

CARDIAC PRACTICE Vol.29 No.3, 71-75, 2018

最近テレビなどで時々耳にするようになった「血糖値スパイク」という言葉をご存知だろうか? 食後の急激な血糖上昇とそれに引き続く急激な血糖低下を表した言葉で,最近2型糖尿病や動脈硬化のリスク因子として注目されている。耐糖能異常(impaired glucose tolerance:IGT)と類似した概念とも考えられるが,IGTが糖負荷2時間後の血糖値を基準としているのに対し,血糖値スパイクはより短い時間での血糖値変動を意味している。
かかる概念が出てきた背景には,持続血糖測定(continuous glucose monitoring:CGM)の普及があると考えられる。以前より糖代謝異常(IGT・糖尿病)には膵ベータ細胞でのインスリン分泌遅延増大が関与していると考えられており,その初期には膵ベータ細胞内のインスリン分泌顆粒(インスリンポケット)に貯蔵されているインスリン量が低下し,血糖上昇に対するインスリン分泌の遅れが生じるといわれている。血糖値スパイクは,かかる膵ベータ細胞のインスリン分泌変化をCGMなどによってグルコース値のスパイク型変化として視覚化した概念として理解できるのではないだろうか?
かかるように整理すれば,血糖値スパイクは特殊な病態ではなくIGTよりもさらに初期の糖代謝異常・膵ベータ細胞不全を含む概念と捉えることができ,血糖値スパイクにこれまでの糖代謝異常に対する知見を応用することが可能となる。もちろん,今後血糖値スパイクに焦点を当てた研究が行われることを期待しているが,本稿では血糖値スパイクを上記のようにごく初期のIGTとして捉え,心血管疾患との関連を議論したいと思う。
「KEY WORDS」耐糖能異常(IGT),持続血糖測定(CGM),経口糖負荷試験(OGTT),心血管疾患,心不全

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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