特集 循環器疾患を見据えた糖尿病治療戦略
臨床 糖尿病薬は循環器治療を変えるか 心筋梗塞抑制を見据えたαグルコシダーゼ阻害薬
CARDIAC PRACTICE Vol.29 No.3, 41-45, 2018
わが国では,生活習慣の欧米化に伴い糖尿病患者数が増加傾向にある。平成28年に厚生労働省が行った国民健康・栄養調査では,糖尿病有病者は約1,000万人と推計されている。今後も,糖尿病患者数の増加が予測されることから,有効な予防・治療対策の確立・導入が必要である。糖尿病は,慢性的な高血糖状態を特徴とする代謝性症候群であり,高血糖ならびに付随する動脈硬化性リスク因子が集簇し,細小血管(網膜症,腎症,神経障害)・大血管障害(心筋梗塞,脳梗塞,閉塞性動脈硬化症)を合併する。特に,糖尿病患者における心筋梗塞などの心血管疾患の発生頻度は高率であり,その予後に影響を及ぼす。海外で行われた疫学的研究は,糖尿病患者の心血管疾患の発生頻度が非糖尿病患者の2~4倍,死亡率も3倍にのぼることを報告している。ゆえに,糖尿病性動脈硬化症を予防しうる治療介入により,心血管疾患の発症を予防することが必要である。
糖尿病治療薬であるαグルコシダーゼ阻害薬は,腸管における糖吸収を抑制して,食後の血糖値上昇を抑制する作用を有する。これまでの研究により,糖尿病性動脈硬化症の形成・進展において,食後血糖値が関与することが報告されてきた。食後血糖値の上昇が心血管イベント発生に関与することから,その治療は糖尿病症例の予後改善にもつながる可能性が期待される。本稿では,αグルコシダーゼ阻害薬の食後高血糖ならびに心血管イベント発生に対する有効性を紹介する。
「KEY WORDS」αグルコシダーゼ阻害薬,糖尿病,心筋梗塞,冠動脈硬化
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