現代では心血管と脳の病態の関連もよく知られ,画像モダリティや神経放射線学の進歩により臨床的な診断精度も飛躍的に進歩しており,剖検を通じて病理組織学的な検証を求められる機会も減ってきているが,個々の症例や病因病態の理解のため疾病の首座である臓器,組織を直接,観察する意義は失われてはいない。古代エジプトでは魂は心臓に宿ると信じられていたが,古代ギリシアのHerophilus(BC 335~220頃)は多数の人体解剖により,知能,精神の首座は脳であると指摘した。その後,ローマ時代には炎症の5徴を指摘したことでも有名な古代医学の集大成者Galenus(AD 129~199)もpneuma(生命の息吹)の源泉は脳(室)であると論じている。血液循環に基づいて脳と心臓の関係が正しく理解されるようになるには,西洋医学が長いキリスト教会支配から脱却して近代医学として再び歩みはじめる16, 17世紀まで待たねばならないが,剖検によって集積された知識や発見から,多くの概念,理論が導かれ,そのような医学の源流は今日まで受け継がれている1)2)。今回は,脳に影響を及ぼす心疾患,あるいは心臓に影響を及ぼす脳疾患について,病理の視点から概説したい。多くはprimary careで鑑別対象となるような一般的な疾患ではあるが,循環器科の先生方にはあらためて実例を目にしていただき,原点に立ち返って心臓と脳の病態を考える契機にしていただければ幸いである。
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病理でみる心臓と脳の関連
掲載誌
CARDIAC PRACTICE
Vol.29 No.1 7-12,
2018
著者名
加藤 誠也
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
/
病理
診療科目
循環器内科
媒体
CARDIAC PRACTICE
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。