<< 一覧に戻る

特集 超高齢社会における循環器疾患

基礎 血管内皮機能と老化

東幸仁

CARDIAC PRACTICE Vol.28 No.2, 23-26, 2017

平成27年度の国勢調査に基づいた厚生労働省の統計によると,全国の平均寿命は,男性が80.79歳,女性は87.5歳であった。男性はスイス,アイスランドの81歳に次いで世界第3位で,女性は世界第1位である。健康寿命でも,男性が71.9歳,女性が77.2歳と世界一である。健康寿命を延長することは,人類の究極の目的の1つである。寿命を損なう1つの大きな要因は,循環器疾患の罹患による健康寿命の短縮,死亡である。わが国の主要死因別死亡率の年次推移をみても心疾患や脳血管疾患などを合わせた循環器疾患による死亡は,悪性新生物と並んで死因のトップである。これまでの膨大な基礎的臨床的知見の集積により,循環器疾患発症は,動脈硬化の発症・進展・破綻によるものであり,その端緒には血管内皮機能障害が存在していることが明らかとなってきた。高血圧,脂質異常症や糖尿病などの疾患や運動不足,喫煙,塩分の過剰摂取,閉経などの因子が血管内皮機能障害に働いているが,最大の血管内皮機能障害因子は加齢である1)2)。“A man is as old as his arteries.”との名言もある。加齢は,最も強力な動脈硬化促進因子といえる。血管の老化を論じる際,いわゆる暦年齢に伴う狭義の血管老化と動脈硬化に伴う広義の血管老化を考える必要がある。血管の老化においては,酸化ストレスを介した血管内皮機能障害が非常に重要な役割を果たしている。本稿においては,血管代謝(血管内皮機能)の側面から,老化に関して概説したい。
「KEY WORDS」血管内皮機能,老化,酸化ストレス,炎症,細胞老化

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る