「はじめに」中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy:TGCV)は,2008年にわが国の心臓移植待機症例より見出された新規疾患概念である1)-3)(図1)。本来,エネルギー源として利用される長鎖脂肪酸(Long chain fatty acid:LCFA)が細胞内代謝異常のため利用できず心筋細胞,血管平滑筋細胞(Smooth muscle cells:SMCs)にTGとして蓄積し,重症の心不全,冠動脈疾患,不整脈などを呈する難病である。心筋細胞やSMCsに「異所性に」TGが蓄積することを特徴とする病態であり,生理的貯蔵組織におけるTG蓄積の多寡を反映すると考えられるBMI,体重,肥満などとは必ずしも相関を認めない。また,細胞内代謝異常に基づくため血清TG値とも直接的な関連はない。われわれは,2009年から厚生労働省,2015年から日本医療研究開発機構のTGCV研究班として活動してきた。本稿では,TGCVの病態,診断法,治療法の開発について述べる。
「KEY WORD」Adipose triglyceride lipase,エネルギー不全,脂肪毒性,中性脂肪蓄積心筋血管症,中性脂肪蓄積型動脈硬化,血管平滑筋細胞
「KEY WORD」Adipose triglyceride lipase,エネルギー不全,脂肪毒性,中性脂肪蓄積心筋血管症,中性脂肪蓄積型動脈硬化,血管平滑筋細胞