「はじめに」チロシンキナーゼとはタンパク質のチロシン残基をリン酸化させる酵素の総称であるが,この酵素は細胞周期や細胞の活性状態などの制御にかかわり,腫瘍の進展にも重要な役割を担っていることが多い。チロシンキナーゼに関連する分子は多種類あり,それぞれの腫瘍でかかわっているチロシンキナーゼは異なるが,各腫瘍で関係の深いチロシンキナーゼを阻害する薬剤の開発研究が進み,一定の臨床的な効果を上げている(表)。一方でチロシンキナーゼは正常血管でも重要な役割を担っているため,チロシンキナーゼ阻害の影響が心血管系の形で発症することも少なくない。本稿ではチロシンキナーゼ阻害薬による血管内皮機能障害を軸にして,血管機能へのさまざまな影響について紹介する。
「KEY WORD」チロシンキナーゼ阻害薬,内皮障害,VEGF,trastuzumab,bevacizumab