「はじめに」加齢に伴って循環器疾患の頻度は増加する. その背景には, 循環器疾患の危険因子である高血圧や糖・脂質代謝異常の加齢性増加があるが, 心血管の老化も大きな要因である. 一方, 老化は心血管のみならず, あらゆる臓器・細胞で進行するので, 結果的に高齢者の循環器疾患には合併症が多い. しかも, 中年者にもしばしばみられる代謝異常や循環器系各臓器の疾患重複とは異なり, 筋骨格系や高次脳機能など日常生活を営む上で必須の機能障害を呈するようになることが特徴である. この点は, まだ多くが元気な前期高齢者ではなく, 後期高齢者で顕著になる. しかも, 今後の高齢化の推移は前期高齢者数の頭打ちと後期高齢者数の増加であることを勘案すると, 高齢者循環器疾患の病態に質的で大きな変化がもたらされると考えられる. 以上の点から, 最近の話題として心血管の老化/抗老化研究も重要であるが, 本誌の企画に十分組み込まれているので, 他臓器の老化や多病と循環器疾患の関連について取り上げてみた.
「KEY WORD」性ホルモン,認知機能障害,多剤服用