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急性冠症候群の最近の動向

(座談会)急性冠症候群の予後改善をめざして

木村剛木村一雄中尾浩一代田浩之

CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.2, 73-78, 2011

 木村(剛)(司会) 急性冠症候群(ACS)は動脈粥腫の破綻と血栓形成を基盤として急性心筋虚血を呈する臨床症候群であり,不安定狭心症~心臓急死が包括された広範な疾患概念です。当座談会では「ACSの予後改善をめざして」と題して先生方にお話を伺っていきたいと思います。

出席者(発言順,敬称略)
京都大学大学院医学研究科循環器内科学教授
木村 剛(司会)

横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター教授
木村 一雄

済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科部長
中尾 浩一

順天堂大学医学部循環器内科教授
代田 浩之

急性期の問題点と予後改善への方向性

1.ACS患者の動向

 木村(剛) ACS患者の動向は地域により違いがあるのでしょうか。日頃の診療を通じて感じておられることを各先生方よりお聞きしたいと思います。
 木村(一) 欧米のデータにもあるとおり,当センターでは,近年,ST上昇急性心筋梗塞(STEMI)症例が減少傾向にあります。
 中尾 当病院では心筋梗塞の総数は約230件/年の横ばい状態で,STEMIと非ST上昇急性心筋梗塞(NSTEMI)の比率に変化があるとはあまり感じておりません。
 代田 当病院ではSTEMIは減少傾向ですが高齢女性のACSが増加している印象があります。
 木村(剛) たしかに高齢者のACS増加は今後も続く傾向であると考えられます。では,重症心筋梗塞症例の占める比率に変化はありますか。
 木村(一) 高齢者は増加していますが,重症例が増えている印象はありません。初回の心筋梗塞例だけに限ってみれば,むしろ少ない印象があります。
 中尾 2006年にわが国の高齢者(65歳以上)人口が約20%を超えましたが,熊本県はそれより7年早いスピードで高齢化が進んでいます。当病院のCCUにもしばしば90歳代がおり,重症例は高齢化と比例して増加傾向にあります。
 木村(剛) ACS患者の動向にはとても地域差があるということがわかりました。

2.「受診の遅れ」

 木村(剛) それでは,ACS患者の予後に関してお伺いします。来院してから冠動脈インターベンション(PCI)施行までの時間(door-to-balloon time)を短縮することがACS患者の予後改善に効果的であることは知られています。しかし,実際は発症してから病院に到達するまでが非常に遅れているケースが大多数で,患者の予後を改善するためには「受診の遅れ」を解決する努力が大事だと考えています。その点に関してお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
 木村(一) 主な原因は患者自身の119番通報の遅れだと思います。症状が軽い場合,本人が心筋梗塞であると気づかず通報していない場合もあるほどです。米国では心筋梗塞の症状や早期通報の重要性を知らせるキャンペーンを行っているのですが,心筋梗塞と勘違いされた症例の通報が増加したり,件数が増加してもキャンペーン終了と同時に通報の状況が元通りになったりと,正確に浸透していない問題があります。
 木村(剛) 熊本県や東京都ではいかがですか。
 中尾 当病院では年に1回市民向け講座を開いて患者への啓発を行っています。また,熊本県全体でも啓発活動を行っており,熊本大学の小川久雄教授を中心に関連病院の部長によって活動内容(新聞での記事掲載といった具体的方法)を決定する会議を開催しています。
 代田 東京都では67施設が集まった東京都CCUネットワークでデータ収集を行っています。そのデータによると,来院から治療までの時間は平均60分なのに対し受診までの時間は平均120分で,3割の人が4時間以上かかっています。問題点はやはり「受診の遅れ」にあり一般の人々への啓発の重要性を感じています。しかし東京都は人口がとても多く啓発が難渋していることから,開業医とハイリスク患者に対して重点的に情報提供を行うことで改善できるのではないかと考えています。
 木村(剛) 横浜市では「受診の遅れ」に関するデータはありますか。
 木村(一) 当センターにおいて,発症後12時間以内の急性心筋梗塞患者を対象に横浜市立大学関連の三次救急病院と市中病院を調査した結果,三次救急病院と市中病院では受診までの時間にかなり差がありました(図1)。

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