<< 一覧に戻る

急性冠症候群の最近の動向

治療 虚血再灌流時の微小循環保護:現状と展望

How to protect coronary microcirculation during coronary reperfusion in patients with acute coronary syndrome

伊藤浩

CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.2, 67-71, 2011

 急性心筋梗塞症例の治療目標は,梗塞責任血管の速やかな再疎通である。なかには責任血管が再疎通しても冠微小循環に構造的障害が生じたために十分な心筋血流が得られない症例が存在し,noreflow現象と呼ばれている。診断法の進歩により,われわれが考えていた以上に多くの症例にnoreflow現象が生じており,心機能や予後と密接な関連があることが明らかとなった。また,それとは別に,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention : PCI)でも末梢動脈に微小塞栓を生じるために微小循環障害を起こすことがある。本稿では冠微小循環障害の機序,病態からその治療戦略に関して述べる。

KEY WORDS
冠微小循環,急性心筋梗塞,冠動脈インターベンション

主な略語
PCI:percutaneous coronary intervention
TIMI:thrombolysis in myocardial infarction

冠微小循環障害の機序は2つある

1.毛細血管の構造的破壊

 1974年Klonerらは,イヌの回旋枝を90分結紮後再灌流しても血流が回復しない領域が存在することを報告しnoreflow現象と呼んだ1)。組織学的検討からnoreflow現象は心筋壊死領域に生じる毛細血管の構造的破壊を反映したものであることが明らかとなった。noreflow現象は再灌流後も進行することから,再灌流障害の一現象でもある(図1)。

2.末梢動脈への微小塞栓

 バルーン拡張あるいはステント留置直後に造影遅延を示す場合があり,血栓やプラーク内容物が末梢動脈に塞栓するために生じると考えられている。大伏在静脈バイパスや不安定プラークへのPCIで認められるが,決して急性心筋梗塞に特異的な現象ではない。冠血流の低下や血行動態の悪化も一過性である。微小塞栓子はドプラガイドワイヤによる冠動脈血流速のモニターでhigh-intensity transient signals(HITS)として観察することができる2)。急性心筋梗塞に対するPCIでも塞栓子は20~30個程度である。稀に大量のHITSが認められる症例があり,そのような症例では一過性のslow flowを呈し,心筋逸脱酵素の軽度上昇や一過性の心機能低下を伴うこともある。

3.異なる規定因子

 毛細血管障害によるnoreflow現象の規定因子は梗塞部位,側副血行路,梗塞リスクエリアのサイズ,責任血管の自然再疎通の有無,再灌流時間等であり,心筋梗塞サイズのそれと同様である。それに対し,微小塞栓の規定因子は,プラークの形態や内容物あるいは血栓量等冠動脈病変に関連したものとなる(表)。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る