はじめに  日本循環器学会による急性冠症候群(ACS)の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)によれば,ACS発症早期からのHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の投与はクラス1(エビデンスレベルA)に指定されていて1),ACSにおける脂質低下療法の有効性は広く知られた事実である。スタチンが虚血性心疾患に対する一次予防,二次予防ともに有効であることは,全世界で延べ10万人以上の患者を対象とした多くの大規模臨床試験で証明されてきた。日本人を対象とした臨床試験でも,J-LIT試験(Japan Lipid Intervention Trial)やMEGA試験(Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese)等,欧米の試験と同様スタチンの有用性が示されてきた。その中で,ACSに対する早期からのスタチン投与の有用性を示唆する成績が報告され注目されている。本稿では,最近のACSに対する脂質低下療法に関する重要なエビデンスを概説した後,特にACS発症早期からのスタチンの有効性についてまとめてみる。 KEY WORDS 急性冠症候群,脂質低下療法,スタチン,LDLコレステロール,プラーク