急性冠症候群における抗血小板療法を考える場合,3つの観点から考える必要がある。まず,その病態の本質が血栓形成であり,通常の安定型の冠動脈疾患に比べ抗血小板薬の意義が大きいことが挙げられる。次に,治療に際して,通常ステントを用いた冠動脈インターベンション(PCI)が行われるが,緊急での治療であり,十分に抗血小板薬が効いていない状況でPCIを行わざるを得ない場合が多いという点が挙げられる。最後の点として,急性冠症候群では消化管出血等,出血性の合併症をきたしやすい点や患者の全体像を把握することが困難な場合があり,ステント留置後に抗血小板薬を中止あるいは休薬しなければならない可能性が比較的高いことが挙げられる。このような点を踏まえ,急性冠症候群における抗血小板療法について概説する。 KEY WORDS 急性冠症候群,抗血小板療法,ステント,ベアメタルステント,薬剤溶出性ステント