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急性冠症候群の最近の動向

トピックス 急性冠症候群における抗血小板療法

Antiplatelet therapy in acute coronary syndrome

門田一繁

CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.2, 23-27, 2011

 急性冠症候群における抗血小板療法を考える場合,3つの観点から考える必要がある。まず,その病態の本質が血栓形成であり,通常の安定型の冠動脈疾患に比べ抗血小板薬の意義が大きいことが挙げられる。次に,治療に際して,通常ステントを用いた冠動脈インターベンション(PCI)が行われるが,緊急での治療であり,十分に抗血小板薬が効いていない状況でPCIを行わざるを得ない場合が多いという点が挙げられる。最後の点として,急性冠症候群では消化管出血等,出血性の合併症をきたしやすい点や患者の全体像を把握することが困難な場合があり,ステント留置後に抗血小板薬を中止あるいは休薬しなければならない可能性が比較的高いことが挙げられる。このような点を踏まえ,急性冠症候群における抗血小板療法について概説する。

KEY WORDS
急性冠症候群,抗血小板療法,ステント,ベアメタルステント,薬剤溶出性ステント

病態からみた抗血小板療法

 急性冠症候群の病態は粥腫の破綻や血管壁のびらん等で血栓形成をきたし,そのために冠動脈の血流が障害され,心筋虚血あるいは壊死を引き起こすことである。急性冠症候群はST上昇型心筋梗塞と非ST上昇型心筋梗塞および不安定狭心症に分けられる。ST上昇型心筋梗塞では心筋壊死が進行しており,迅速な血行再建術が必要となる。このような状況では,抗血小板薬を含めた薬物療法も重要ではあるが,血行再建時の併用あるいは後療法であり,その役割は補助的なものとなる。これに対して,不安定狭心症ならびに非ST上昇型急性心筋梗塞では,従来よりまず抗血小板薬を含めた抗血栓薬や各種冠拡張薬等の薬物療法を十分に行い,病態をできるだけ安定化させようとする早期保存的治療法と,早期の時点で冠動脈造影を行い,冠動脈インターベンション等の血行再建を行う早期侵襲的治療法が比較されてきた。早期保存的治療法においては,抗血小板薬そのものの治療としての役割が非常に大きい。実際に,非ST上昇型急性冠症候群を対象に1年間の抗血小板療法として,アスピリン単独群とクロピドグレルを併用する群とで,短期および長期予後を比較するCURE(Clopidogrel in Unstable Angina to Prevent Recurrent Events)studyが行われている1)。この検討では,アスピリン単独群に比べ,クロピドグレル併用群において30日および1年時点で心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントの頻度が有意に低いことが示されており,このような急性冠症候群では,不安定な病態の安定化に対する抗血小板薬の意義の重要性が示されたものと思われる。このような点から,少なくともPCI治療の有無にかかわらず,非ST上昇型の急性冠症候群では,アスピリンおよびクロピドグレル2剤の1年間の投与の意義が示されており,ST上昇型心筋梗塞でも,ステント留置の有無にかかわらず1年間の2剤の抗血小板療法が推奨される。

PCI施行時の抗血小板療法の特殊性

 急性冠症候群に対するPCIでは,安定型の冠動脈疾患に対する待機的PCIと異なり,あらかじめ十分に抗血小板療法を効かせた上でPCIを行うことが難しい。抗血小板薬としてクロピドグレルが使用できなかった際には,抗血小板薬の効果がほとんど効いていない状況で,PCI,特にステント留置を行わざるを得なかった。クロピドグレルの導入によって,300mgのローディングを行うことで,数時間後にはある程度の抗血小板効果を得ることができるようになった2)。欧米のガイドラインでは,さらにより早期に十分な抗血小板効果を得るために,クロピドグレル600mgのローディングも推奨されている3)。わが国では,600mg投与は保険適応ではないが,冠動脈造影後あるいはPCI後にステント血栓症のハイリスク症例と判明したような場合には300mg追加投与し,全体として600mg投与することが有用な状況があるのかもしれない。

2剤による抗血小板薬の投与期間

 欧米のガイドライン4)上,急性冠症候群ではステントの種類にかかわらず急性冠症候群という病態を配慮して,最低1年間のアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬の投与が推奨されている。薬剤溶出性ステント留置後1年以後の抗血小板療法について,近年,韓国から薬剤溶出性ステント留置後1年時点で,アスピリン単独群とアスピリンにクロピドグレルを加えた2剤による抗血小板薬投与群とで,その後のステント血栓症を含めたイベント発症についての報告がなされている5)。この検討では,全例が急性冠症候群ではないが,60%あまりの症例が急性冠症候群の症例であった。結果についてみると,両群のイベント発症率に違いを認めず,1年以後のクロピドグレル追加投与の意義を認めなかった。この報告からは,薬剤溶出性ステント留置例全体で考えた場合には,2剤による抗血小板療法を1年以上継続する有用性はないといえるのかもしれない。しかし,ステント血栓症の頻度そのものが非常に低く,千数百レベルの症例の検討では結論を出すには不十分で,リスクの高い症例を同定し,そのような症例を対象とした検討が必要なのではないかと思われる。

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