はじめに  慢性心不全患者の多くは入・退院を繰り返す高齢者であり,心臓救急の現場では,再入院予防への対策が急務となっている。欧米では,1990年代半ばから,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士等がチームを組み,患者教育・治療アドヒアランスの向上・病状モニタリング・服薬管理を行う疾病管理(disease management)が,死亡,再入院といった予後や生活の質(QOL)に効果を示すことが数多く報告されている1)-19)。わが国においても,心不全患者に対する疾病管理の有効性の議論が高まっており,慢性心不全治療ガイドラインにおいても,一般管理の項に記載されている。しかしながら,日本人を対象としたエビデンスは皆無であり,今後,日本人を対象とした研究の実施とエビデンスの構築が求められる。本稿では,慢性心不全患者の治療において,疾病管理が必要とされる背景とその有効性,さらにはわが国における疾病管理プログラムの構築について概説する。