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ガイドラインに基づいた心不全の非薬物療法

ガイドラインに基づいた治療戦略 呼吸補助療法

Respiratory support therapy

百村伸一

CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.1, 41-48, 2011

はじめに
 心不全あるいは心不全に関連した病態で呼吸補助療法の適応となるのは現在のところ第一に急性心不全,特に急性心原性肺水腫,第二に心不全に合併する睡眠呼吸障害で,それぞれについて日本循環器学会が中心となり作成したガイドラインに指針が示されている1)2)。
 呼吸補助療法の中でも主体となるのは陽圧呼吸補助と酸素療法である。陽圧呼吸補助の中で持続気道陽圧(CPAP)はフラットな陽圧を持続的に加える呼吸補助機器である。一方 non-invasive positive pressure ventilation(NPPV)は吸気時にさらに圧を加える(pressure support)機器である。以前から主に呼吸不全の治療機器として用いられてきたBilevel PAPの他に,新しいタイプのNPPVであるadaptive servo-ventilation(ASV)がある。厳密にはCPAPとNPPVは異なるが,しばしば両者をまとめてNPPVとして扱われる。

KEY WORDS
CPAP,NPPV,ASV,HOT,急性心原性肺水腫,睡眠呼吸障害

急性心不全に対する呼吸補助(表1)

 急性心不全はいくつかの病態に分けられるが,その中でも急性心原性肺水腫は最も典型的かつ重症な心不全の病態の1つである。急性心原性肺水腫においては肺毛細管圧の上昇とともに間質から肺胞にも水分の漏出が起きるため,酸素化も障害される。したがって肺水腫の治療では肺毛細管圧を下げることと同時に肺での酸素化を図ることがもっと重要な目標となる。肺毛細管圧を下げるためには硝酸薬等の血管拡張薬や利尿薬が用いられる。一方SaO2>95%,PaO2>80mmHgを目標とした酸素化を維持するためには軽度であればまず鼻カニュラによる酸素投与が行われる。しかしそれだけでは酸素化が改善しない場合に用いられるのがNPPVである。NPPVを行うことにより単に酸素化を改善できるのみならず胸腔内を陽圧にすることにより肺水腫そのものを改善する効果も大きい。NPPVには気管内挿管を回避できることによって挿管に伴う感染症(VAP)も防ぐことができる,鎮静も必要とせず患者の会話や食事が可能である,着脱が容易であるなどのメリットが挙げられる。
 急性心原性肺水腫に対するCPAP,NPPVの推奨をサポートする重要なメタ解析が2つある。2005年のMasipらのJAMAの報告と2006年のPeterのLancet誌の報告である3)4)(表2,3)。

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