ガイドラインに基づいた心不全の非薬物療法
ガイドラインに基づいた治療戦略 カテーテルアブレーションによる心房細動治療
Treatment of atrial fibrillation with catheter ablation
CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.1, 29-34, 2011
心房細動(AF)は心房収縮の喪失と不規則な心室収縮をもたらすと同時にしばしば頻脈となり,これが持続することにより頻脈誘発心筋症,心機能低下,そして心不全へと至る。
一方,心不全は心房への容量負荷,圧負荷等により心房の構造的変化(間質線維化),電気的変化(イオンチャネルの変化と細胞内カルシウム過負荷)をもたらし,AFが発症しやすくなる。すなわち,AF begets HF, and HF begets AF(AFは心不全を発症させ,心不全はAFを発症させる)と記載されているように1),AFと心不全は悪循環のループを形成し(図1),生命予後を悪化させる。実際に心不全が重症になるほどAFの合併頻度は増加し,心不全全体では10~30%がAFを合併するとされる1)。
もう1つ重要な問題として,AF例が心不全に至ると脳梗塞発症リスクが高くなり,生命予後はさらに悪化する。AFは高齢者に多いが,心不全も高齢者に多い。わが国の疫学研究では60歳を過ぎるとAF罹患率は急激に増加し,80歳以上の男性のAF罹患率は4~5%に達することが示されている2)。わが国の人口のさらなる高齢化を考慮すると,AFと心不全の適切な管理は臨床的にきわめて重要となる。以下に心不全例におけるAF治療の進め方,カテーテルアブレーションの位置づけを最新のガイドラインに沿って解説する。
KEY WORDS
心房細動,心不全,リズムコントロール,レートコントロール,抗凝固療法,カテーテルアブレーション
ガイドラインからみた心不全に伴うAFの治療
日本循環器学会合同研究班「心房細動治療(薬物)ガイドライン」が2008年に全面改訂された3)。2000年以降,相次いで発表された多施設臨床試験の結果に基づき,AFに対する基本的アプローチとしては頻脈を防ぐレート治療が基本で,症状が強い場合に洞調律維持のためのリズム治療〔抗不整脈薬療法(時にカテーテルアブレーション)〕が推奨された。この中で心不全に合併したAFに対する治療は,まずAFの上流に位置する心不全の原因および助長因子を除去または治療した上で,ジギタリス,β遮断薬によるレート治療が第一選択となり,リズム治療を行う場合はアミオダロンが推奨されている(図2)。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。