はじめに  心不全患者では心筋の電気(興奮)―機械(収縮)の非同期性により心室の有効な収縮が得られず,左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が一層低下することが多い。最も頻度の多い非同期性障害としては心房―心室伝導の遅延(Ⅰ度AV block)と,左脚ブロックに代表される心室内の伝導障害が挙げられる。心室内伝導の延長(QRS幅の増大)は左室の前壁―側壁間の壁運動の非同期性(dyssynchrony)をもたらし,心室の収縮機能を低下させると同時に心筋代謝を悪化させ,僧帽弁逆流,心室の拡大等リモデリングをもたらす。心不全患者の約1/3に認められるQRS幅の増大とdyssynchronyは心不全の増悪や突然死,総死亡等予後予測因子として重要である1)。